後日談ってやつ
第2話
あれから何日か経っているけど、襲撃や強盗など物騒な事は起きていない。私たち家族は平和に暮らしている。
今日も買い物で町に行く事になった。町の様子も前と比べても、獣人たちが圧倒的に増えて元気そうにしている姿が見れた。サクラが頑張ってくれた証だなと感じる。
母さんには相変わらず、鬱陶しい程の男が引っ付いている。私が追い払ってあげないといけない、と思って行動しようとする。
『お前ら、邪魔』
サクラが既に男たちに威圧していた。情けなく失神する男どもを放置してそのまま買い物の続きを再開する。
最近、街で見かける大きめの動物たちは、獣人が動物になった姿。前にグライスがなっていた、大きいオオカミがこれに当たるらしい。
「大きさも調節できるけど、得意な人と苦手な人に分かれるよ。私も上手にできないから、頑張って練習しているんだ」
グライスがそう教えてくれる。グライスを褒めていると、顔が真っ赤になってサクラの後ろに隠れてしまう。可愛いけど悲しい。
その動物や獣人たちは物の運搬など町のことや色んな事をしてくれている。おかげで町は大助かりなんだそうな。
買い物も終わったので、皆で家に帰る。買った物の仕分けをやり始めた頃に、ある音が聞こえてくる。
嫌な予感がして窓を見ると、鳥にしてはかなり大きい影があった。心当たりはあるけれど、何故今更なのかが分からない。グライスを見ると、耳が伏せてになって体がふるえている。サクラが駆け寄って宥めている。サクラが私を見て言う。
「私の妹でもあるグライスを泣かせたんだ。プルールト、後は分かるよな?」
私は頷く。グライスがこんな状態になって、黙っていられるはずがない。
飛び出すように外に出てみると、そこにはやはりドラゴンがいた。実際に見た事はないが、私と同じ赤色をしている時点で予想はできる。きっと私の父——認めたくはない――である、クソ野郎だろう。
クソ野郎が着地した衝撃で地面が揺れ、木々が倒されていく。周りの迷惑も考えられないのか、クソ野郎め。怒りを抑えながら一応、要件を聞いてみる。
「人間風情に教える筋合いなど無い!さっさと失せろ、雑魚ごときが」
……私はここまで我慢したんだ。もう、いいよな。
勢いを付けて、思いっ切りクソ野郎の顔をぶん殴る。うん、痛みも特にない。クソ野郎は少し振らついただけだ。まだまだ、いけそう。容赦なく殴り続ける。
限界がきたのか、クソ野郎は地面に倒れ込む。この程度なんだ。私の母さんを無理やり襲った癖に。許せない。もう一発殴ろうとする寸前でクソ野郎は慌てて腹を見せる。降伏のサインだったので、手が出すに出せなくなった。殺せる良い機会だったのに。
「人間風情と侮っていた我が悪い。済まなかった。ただ、我は子供を探しに来ただけだ。我と同じ色をしたドラゴンを知らないか?」
とりあえず、頷いた。途轍もなく、嫌だがドラゴンの姿を見せるしかないか。下手に違うと言って他の所で暴れられても、困るだけだしな。
家に被害がいかないように離れる。この位離れていれば問題ないだろう。体を元のドラゴンの姿に戻す。
視点が高くなり、必然的にクソ野郎を見下ろす形になった。人型になれたから、二度となりたくなかったドラゴンの姿。
まじまじと見ているクソ野郎の目を潰したくなる。そんなに見るなよ、気持ち悪い。唸り声を上げたくなったが、グライスの事を考えるとやらない方が良いな。
「……本当に我の子供なのか?我よりも大きいではないか、これでも我は大きい方なんだぞ」
大きさなんてどうでもいい。クソ野郎の自慢話も聞きたくない、早く要件を言え。クソ野郎の首に鉤爪を軽くめり込ませる。血が滲んでいく。
「わ、分かった。早く要件を言う。子供がドラゴンの姿になれるようになったら、連れてこいと里の長の命令で来たんだ!用はこれだけだ、だからその爪を離してくれ」
ドラゴンの姿になれるように、なったらだと?ふざけるな、私は家族を守るためにこの姿になったというのに。平然と当たり前の条件になっているんだ。
もう耐えきれない。こいつを殺してやる!咆哮を上げて、更に鉤爪を突き立てる。
いつの間にか来ていたサクラに撫でられて、宥められる。
『プルールト、落ち着きなさい。今こいつを殺せば、里の連中がこっちに来て大切な家族に被害が出るかもしれないのよ。それでも良いの?』
それは嫌だ。すぐさま鉤爪を離して、クソ野郎が生きているかを確認する。一応生きている様だ。
無駄に生命力があるな。これなら、あとで死ぬ寸前まで追い詰めてやっても、問題なさそうだな。
「少し聞いてもいいかしら、そこのドラゴンさん。貴方は子供を育てるつもりはあったの?」
クソ野郎は聞いている意図がよく分かっていないみたいだった。分かりやすく首を傾げている。そして当たり前の事を言うように言い放つ。
「何を言っている。子育てなど、雌がする仕事だ。我はせいぜい里に連れて行くのみで関与などほぼしない。それで子供が死ねばそれまでだ。当たり前であろう?」
サクラが激怒しているのが、圧で伝わってくる。クソ野郎は恐怖で動けなくなっているようだ。かく言う私もサクラの圧で体が少しふるえている。心なしか前よりも圧が強くなっているみたいだった。
「この粗大ゴミは去勢してから、元の場所に戻さないといけないわね。プルールト、手伝いお願いね」
有無を言わせない雰囲気だった為、すぐに頷く。だが、母さんを無理やり襲った事を思い出した。クソ野郎が他に被害者を出さない為にも、使えなくさせた方が安心だ。
丁度、腹が上を向いているから場所が分かりやすい。多分この辺りだろう。暴れられると大変だから、魔法で身動きできない程に縛り付ける。
「答えろ、何をするつもりだ!」
クソ野郎の問いには答えるつもりはない。代わりに口にも魔法で拘束を付ける。うるさいと近所迷惑だからな。クソ野郎の物を摘み上げる。
サクラが何処からか取り出したのは、何故かノコギリだった。ノコギリを根元に当てて切り始める。
クソ野郎がうめき声を上げているが、サクラは気にもしないで切り続ける。そしてようやく終わった。
だが、違う問題が発生する。クソ野郎のこれをどうするべきか迷う。
「埋めるのは後で問題になりそうね。燃やした方がいいと思う」
それなら、塵も残さないように燃やし尽くしてやろう。少し上を向いて息を吸い込み、火力を限界まで上げるようにイメージをして思いっ切り吐き出す。
所詮ブレスと呼ばれているモノをしてみた。これで、あれは消し炭になった。
クソ野郎はというと、どうやら気絶してしまったらしい。手間のかかる奴だ。やる事は終わったので全身の拘束を解除する。サクラもノコギリを何処かに収納した。
「さて、こいつを起こさないと里の場所が分からないね。となると、叩き起こすのが最適かな」
サクラがそう呟いてクソ野郎の顔に蹴りを入れる。良い音が鳴り響く。クソ野郎が悶えている所を見ると、普通に痛そうだなと少しだけ同情する。
まあ、起きたみたいで何よりだ。
「それで、この子を里に連れて行くつもりなのでしょう。私もついて行って良いわよね?」
「……分かった。好きにするがいい」
クソ野郎は先に飛び立って上空に行った。まだ、痛むのか不自然な飛び方になっていたのは見なかった事にしよう。
この姿では下手するとグライスが泣く。それは私の精神がすり減るので、行くのが怖かった。
それで私は母さんとグライスに行ってくる事を伝えてほしいとサクラにお願いする。サクラが了承してくれて家に向かった、と思ったらもう帰ってきた。普通に早い。
前と同じ様にサクラを背中に乗せて、そっと飛び立つ。クソ野郎の後を追って飛んでいく。
そういえば、何でサクラはついてきたんだろう。別に家で待っていても良かったはず。
『貴女、馬鹿?私が居ないとその姿じゃ話すらできない癖に、何を言っているの』
そうだった。サクラが普通に話を進めてくれていたから、すっかり忘れていた。ありがとう、サクラ。
『……分かったら良いの』
うん?サクラはもしかすると、照れているのかな。流石に背中は角度的にも見えないので、想像してみる。とても可愛い。
『はぁー、あんまりそういう事を言わないで、恥ずかしくなる。止めて』
尻尾がトグロを巻きそうになる。飛んでいる最中にするのは危ないので、しないように頑張った。
でも、飛んでいるだけでは暇なので、サクラと色々な事を話す。サクラの特殊能力の事とか、サクラの本名が気に入らないから、この名前にした事とかを喋っている内にどうやら着いたらしい。
クソ野郎がある場所で止まった。私もサクラに負担が掛からないように、ゆっくり止まる。
「ここがドラゴンの里だ。長に伝える事があるから、そこで待っていろ」
クソ野郎は先に里に入っていく。何を伝える必要があるのか分からないが、素直に待っている事にしよう。面倒くさい事は避けたい。
里を見下ろしてみると、周りが高い山に囲まれた自然ばかりの場所だった。確かにこれは空から入った方が楽そうだな。断崖絶壁と言える程の山々は登るのは困難だろう。少なくとも暮らすのは不便にみえる。
ところで、私たちはいつまで待てばいいのだろうか。クソ野郎が戻ってくるまで放置される事になるのか、そもそもクソ野郎が戻ってくるのか分からない。
一応、少し待ってみる事にしよう。話し合いでもしているかもしれないからな。
それからどの位の時間が経っただろうか。迎えが来るわけでもなければ、もう少し待てという知らせも無い。
私たちは忍耐力を試されているのか。そう思えてしまう。本当に何も無い。突入してしまおうか。そろそろ飛び続けるのも限界だった。
『そうね。何も言わないあちらが悪い。プルールト、行っちゃいなさい!』
サクラに言われるがままに、里に入る。着地するのに良い所を見つけたので、そこに向かい着地した。私はそこまで長く飛んだ事が少ないので割と疲れた。やっと休める。
だが、休憩させてくれるつもりはなさそうだ。私より一回り位小さい一体のドラゴンがこっちに寄ってくる。
私より小さくてもドラゴンはドラゴンなのだ。油断するわけにはいかない。身構えていると、ある程度近づいてきたドラゴンが口を開いた。
「見かけない顔だな。新入りか。なら、番も居ないだろう?どうだ嬢ちゃん、俺の番にならないか?悪いようにはしないぜ?」
誰が誰と番になるだって?ふざけるなよ。見知らぬドラゴン如きが調子に乗るな。尻尾を地面に叩きつけて、威嚇する。
「おいおい、そう怒るなって。だけど新入りの分際でその生意気な態度は、許されないぜ?体だけ大きくても使いこなせないと、意味がないという事を教えてやるよ!」
見物しに来たのか、他のドラゴンも集まってくる。私は見世物ではない!苛立ちが混ざった咆哮は、いつもより声量が増して周りに響き渡る。
突っ込んで来たドラゴンをぶん殴り、その勢いのまま吹き飛んでいった。それを見たドラゴンたちが何故か私に攻撃を仕掛けてくる。
始めは殴る蹴るで対応していたけど、あまりにも数が多いせいで対処しきれなくなってくる。サクラがドラゴンの位置を教えてくれていたが、それも間に合わなくなった。
自然が多い場所だから遠慮していた。だけど、そっちがそうしてきたのが悪い。容赦なく燃やしてあげよう。
魔法陣を展開して、ほぼ全部の魔力を込めて発動させる。無数の炎の玉を出現させてドラゴンたちに勢い良くぶつけまくった。
ドラゴンたちが次々と倒れていくのを見て安心する。それと魔力もほぼ無くなった状態な事も合わさって、体の力が抜けて地面に倒れてしまった。これは当分の間動けない。
安堵したのもつかの間、最初にぶっ飛ばしたはずのドラゴンがやって来た。
「流石にもう動けないようだね。それじゃあ遠慮なくヤらせてもらおうかな」
近づいてくるドラゴンから逃げようと咄嗟に動こうとするが、体は言う事を聞いてくれるはずもない。
せめてもの威嚇をするが、酷く情けないものしか出せない。嫌だ。犯されたくない。
『プルールト、もう頑張らなくていい。こいつの相手は私に任せて』
私の背中から降りたサクラはとても頼もしかった。私を守るように前に出て堂々とした態度でドラゴンを待ち構える。
「私の嫁に手を出すつもりなら、私を倒してからにしなさい。まあ、貴方如きに私は倒せるはずがないけど」
「人間風情がドラゴンの嫁?ははっ笑えない冗談だろ。いいよ、挑発に乗ってやるよ!」
サクラを掴もうとしたのか、手が出てくる。だが、分かっていたかのようにサクラは避ける。当たり前だ、サクラは心の声が聞こえてくるのだ。避けられないはずが無い。
鉤爪で引っ掻こうとしても避けられ、尻尾で叩きつけようとしても避けられ、あらゆる手段で攻撃してもサクラには当たる事が無かった。
「何故だ、何故だ、何故だ!攻撃が当たらない!どうなっていやがる!」
「絶対に教えてあげない。さて、もう終わりにしましょう」
サクラが得意な(?)威圧をして、相手のドラゴンが動けなくなった。
その間に、何処からか取り出したノコギリを勢い良く投げた。綺麗にドラゴンの目玉に刺さってドラゴンが悶えている。サクラがそのドラゴンに触って何かを言った。酷く怯えているようだった。
「わ、分かった。もうお前たちには手は出さない。だから、それだけはやめてくれ……!」
「分かればいいのよ」
サクラが言った内容を察した。サクラがドラゴンに突き刺さったノコギリを引っこ抜いている。でもこれで犯される事はなくなったので、一安心する。後でサクラにお礼を言わないといけないね。
サクラが駆け寄ってきて、心配そうな表情をしていた。まだ力が入らないままの手に優しくサクラが触る。
『プルールト、大丈夫?私が居たのに嫌な思いさせたよね。ごめんなさい』
サクラは悪くない。寧ろ、力加減を間違えて動けなくなった私を助けてくれた。ありがとう、サクラ。
後、少し言いづらいんだけど、さっき助けてくれた時にとても嬉しくなってしまったというか、それで好きになってしまったらしくて、どうしようもなくなっています。
『そんな事を言われても、私が誰かに好かれる事なんてなかった。だから、どうしていいか分からないわよ!責任なんて取れない』
責任は取らなくていい。私が勝手にサクラの事が好きになっただけ。ただ、お願いできるなら私の傍に居てくれると嬉しいかな。私の番になってほしいけど、無理強いはしたくない。
『プルールトの気持ちは分かった。私はプルールトと同じ気持ちになれないかもしれない。それでも良いの?』
同じ気持ちになるまで、ずっと待っている。そうなるように、私が頑張れば良いだけ。私を好きにさせてみせる。
『そこまで言うなら、私は止めない。私が言うのも、おかしいけど私を好きにさせるのを頑張ってね』
うん、絶対に好きにさせてみせる。じゃあ早速サクラの好きな所を片っ端から言う。ちゃんと最後まで聞いていてね。
『分かった。最後まで聞くよ』
私がサクラの好きな所を沢山言い続けていく内に、サクラの顔が赤くなっていく。耳を塞ごうとするサクラに、最後まで聞くって言った事を言うと手を下げて聞いてくれた。
それだけでも、私はもう尻尾がトグロを巻きそう。まだ魔力が回復しきれていないから力が入らない。だから、トグロも巻けない。
『そんなに残念がらなくても、私には聞こえているから大丈夫』
やっぱり、サクラ好き。大好き。もっとサクラの好きな所を言う!
でも、それは叶わなかった。クソ野郎ともう一体の一段と小さめのドラゴンが何処からかやってくる。今更、何しに来たんだ。威嚇しようとするが、サクラに止められる。
「ほう、この子にほぼ全員やられたのか。そこに居る人間も強いとみえる。中々良い者を連れてきてくれたなフォイッツよ」
「ありがたき幸せです」
あのクソ野郎が丁寧な言葉遣いをしている。その事実が私に衝撃が走った。このドラゴンがクソ野郎の言っていた里の長みたいだ。体の大きさは関係ないのか。
「済まないな。君たちを試す為に、ドラゴンたちに攻撃するように命令した。この里に住む資格があるかを見定めさせてもらったのだ。君たちは合格だ、この里に住んでも良い」
なんだそれ。このどうでもいい里に住む為だけに、私は犯されかけたのか。許せない。サクラが私を宥めるように撫でてくる。
「この里に住める事はありがたいのですが、済みません。この子が大分疲れてしまったようなので、もう帰りますね」
何でサクラは平気そうな顔が、できるのか全く分からなかった。この感情は私だけしか持っていないのか。
『私もプルールトがその為だけに犯されかけていたのは、許せない。だけどこの場で言っても伝わらないわよ。ここに居るのは気分が悪くなるから、早く人間の姿になって出るよ!』
人間の姿になれる位の魔力はあったので、すぐになった。だけど魔力が少ないせいなのか、いつもより小さい大きさになってしまった。
サクラに背負われて逃げるように里の外に向かった。私が焼き払ったおかげで少しは進みやすそうだ。
だが、断崖絶壁の山をどう上るかが問題だった。私が飛べられれば、問題なかったが、あの高さまでは今の魔力では行けそうにない。
『プルールト、私にちゃんと掴まっておいて。よじ登るから』
サクラの言う通りに、しがみつく力を強くする。あまりない凹凸に手や足を引っ掛けて上に登っていく。あっという間に頂上に辿りついた。
サクラが急に飛び降りたので、反射的に翼を生やして滑空した。里からもある程度離れた森に無傷で着地したので良しとしよう。
『少し開けた所に出たわね。ここで野宿するから、プルールトはいつもの半分位の大きさのドラゴンになっておいて。私は辺りを探索してくる』
日も暮れてきたので、野宿する事には賛成だ。この場所から家まで行くには体力がいる。
地面に下ろされた私は、さりげなくサクラに難しい事を頼まれた。ドラゴンの大きさを変えるのはやった事がない。一か八かでやってみるしかなさそうだ。
自分のドラゴンの姿を思い浮かべ、小さくしていく。グライスの大きさが丁度良いな。良しこれでいけるはず。
ドラゴンの姿になった私は、視点が普通の時よりも低くなっている。どうやら成功したようだ。後はサクラが戻ってくるのを待つだけだな。目を閉じて周りにある魔素を取り込んで魔力の回復を促す。
サクラが戻ってきた。目を開いて見てみると、柔らかそうな草を大量に持っている。
「これは寝床用だから、燃やさないでね。後は食料の確保できれば良いんだけど、そう簡単にはいかないわよね……」
サクラが草を敷き詰めて寝床を作る。私は寝転んでも平気だったので、寝床は必要なさそうだ。
問題は食料の調達。私は一日位抜いても大丈夫だが、サクラはそうもいかない。日が沈む前に探したいところだ。
「どうやら、近くに人が居るみたい。ちょっと行ってくる。ここで待っていてね」
サクラが走っていった。サクラが帰ってきたのは日が沈む寸前。サクラにしては珍しく戻ってくるのが遅かった。
でも抱える程食料を持ってくるのは流石だな。何をしたのか気になるが言いたくなさそうなので止めておく。
食事が終わる頃には真っ暗になり、寝る事になった。サクラが前に敷き詰めた草に寝転ぶ。私が周りを囲うようにして、サクラに風が当たらない様に翼を掛ける。
「おやすみ、プルールト」
おやすみ、サクラ。すぐに眠気が来て寝始める。
翼を揺さ振られて目が覚める。辺りは既に明るくなっていて、朝がきた事が分かった。魔力も回復しきれたみたいで、今日中には家に帰れるはず。
サクラはまだ寝ている様だ、起こすのは可哀相なので起きるまで待っていよう。サクラは寝ている顔も綺麗だな。翼で顔を隠すようにしているところを見ると、起きているようだ。
でもそんな所も可愛い。痛い。照れ隠しに翼を殴らないでよ。
『プルールトが恥ずかしくなる事を言うのが悪い。さっさと家に帰るわよ。義母様とグライスが心配しているはず』
そうだね。早く帰ろう。サクラを背中に乗せて飛び立つ。
私たちを待っている家族の元に向かって、翼を羽ばたかせて行った。家族と会えるのを楽しみにして。
クソ共が襲ってきたのでやり返す! むーが @mu-ga
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