第10話 第一の犠牲者①
僕と梨子は、曽根あいらさんの周辺を調べることにした。彼女が亡くなってすぐに囁かれた『次は加奈の番だよ』という言葉が引っ掛かったからだ。
この連鎖系の心霊現象を、曽根さんと一緒に体験した人がいるんだとすればその人が『加奈』である可能性が高い。
そして、彼女はまだ生存している。僕たち次第で加奈さんを救う事ができるかも知れないのだ。
『すみません、雨宮さん……加奈と言う方の名前は聞いた覚えがなくて。曽根は、あまり自分のことを話さない子だったもので、交友関係も良く知らないんですよ。まぁ、僕が男だからかも知れませんが……、仲が良かったメンバーの一人と話してみますか?』
マスコミと取引先の対応に追われる杉本さんは、送話器越しでも疲れている様子が良くわかった。
事務所には週刊誌の記者が張り込みをしていると言うので、近くの
「すみません、わざわざ大変な時にここまで来て頂いて」
「いいえ、外に出ないと気が滅入るから……探偵さんには協力したいんです」
梨子がそう言うと、目を赤くした彼女は鼻を啜りながら頭を降った。どうやら、僕たちの事は曽根さんが受けた嫌がらせの捜査する探偵として杉本さんから紹介されているようだ。
まぁ、彼女が悪霊に憑かれて亡くなったので調査してます、なんて口が裂けても言える訳がない。
僕たちは、彼女に紅茶とケーキを奢るとに質問した。
「早速なんですが、曽根さんの交友関係ってどうでしたか? 加奈さんという方の名前を聞いたことがありますか?」
「ん……。あいらさんって優しいけどあまり自分のこと話さない人だったんです。加奈さんっていう人は、事務所にもいないし……芸能関係の身近な人でも、加奈って人はいないんですよね」
彼女の話によると、親しい間柄でもあまり自分の事を話さないタイプだったようで、広く浅く芸能関係者と付き合っていたようだ。親しくなって遊びに行くようになっても、地元での出来事や思い出はほとんど話さなかったと言う。
もしかして芸能人という自分のイメージを壊さないようにしていたのだろうか。
「そう言えば、あいらさん凄く落ち込んでいた時があるんですよ。このユニットを組む前に地下アイドルしてて、その時から付き合ってるバンドマンと別れたのかなーって思ってたんですけど。
おかしくなる一ヶ月くらいかな……地元、埼玉なんだけど、高校の時の友達が亡くなってお葬式に行ってきたんだって」
僕は胸がざわつくような感覚がした。
曽根さんの周りに死が纏まりついているような不気味な感覚だ。地元が埼玉なら、車でもすぐに行ける距離だなと考えながら僕は訪ねた。
「ちなみに、亡くなった方のお名前って聞かれましたか? もし覚えていたら教えて頂きたいんですが」
「加奈じゃなかったですよ、確か
廃校になったのは七年前くらいと比較的最近のようだった。曽根さんが卒業した後くらいだだろうか。
結菜さんが同級生か下級生かはわからないがSNSで検索すれば情報を得られるかも知れない。結菜さんと曽根さんの共通の友人に加奈さんがいる可能性だってある。
だけど、そうなると今度は偶然にしても奇妙な繋がりが出来てしまうような気がして、背筋が寒くなった。
情報提供してくれた彼女を見送ったタイミングで携帯が振動し、僕らは同時に反応した。
「ありがとうございました。あ、ねぇ、健くん。間宮先生からライン入ってきたよ」
「え、本当だ」
『ふーん。何の用なんだかねぇ』
一番最初の事件で、廃村に伝わる不気味で残酷な因習について教わり、前回の事件では呪われた絵画に憑く魔物と化した悪霊を鎮める為に、共に行動をしてくれた人で、強力な助っ人だ。
霊感はあるがオカルトは苦手な僕とは違い、霊感は無いけど、オカルト関係に
何故かばぁちゃんは、間宮さんと関わるとあまりいい顔をしない。
霊能力者と名乗る同業者にも厳しいところを見ると、心霊好きな
『雨宮くん、天野くん。また心霊事件に巻き込まれたのかな? 僕も一緒に捜査したいけど今回は研究が忙しくてね、残念だなぁ。
だけど、興味深い内容だね……霊が電子機器を使ってメールを送信できるか、か』
僕は過去に、浮遊霊の気配を感じ部屋に置いてあるパソコンに霊が勝手に起動し、文字を残していくという事を体験した事がある。
普段は、霊を見ないようにスイッチをオフにしているけど寝ている最中に勝手に入ってしまう時があって、そんな時にこんな奇妙な体験をするのだ。
だけど大抵は朝になると、その痕跡は無くなっていたりする。夢をみたのか、幻覚のようなものを霊によって見せられているのか定かではないけど、とにかく痕跡が無くなる。
だから僕と梨子は、あの不気味な『闇からの囁き』のメールが形として残る心霊現象として過去に事例があるのかどうか、ということを訪ねた。
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