第11話 第一の犠牲者②
『僕の体験から言うと、霊が文字を残すような事があっても翌日には消えています。霊現象に悩まされていた友達のSNSに、霊が書き込んだような痕跡はあったんですけど、文字化けして意味不明でした』
僕は隣の梨子をそれとなく見た。廃村に肝試しに行って亡くなった友人は、僕の
別れる直前だったとはいえ、あの時はかなりショックを受けているようだったけど、今は静かにラインに視線を落としている。
彼が亡くなる前にSNSに返信されたいた言葉は文字化けをしていて、日本語として意味をなしていなかった。
『なるほど。雨宮くんは
『人によって見え方は違うって、聞いたことありますね。私も健くんと一緒にいるようになって少し視えるようになりましたけど、声が聞こえたのは一度だけです』
僕は物心ついた時から人には見えない者たちが見えていたけれど、ばぁちゃんいわく霊が視えると言うのはラジオのチューニングが合っている状態なんだという。
霊能力者の多くはチューニングが合うように修行し、ようやく声が聞こえるようになる。
『あまりに故人の思いが強いと、向こうからチューニングを合わせてくる時があるんだ。あくまで可能性として聞いて欲しいんだけどね、死んだ人間が相手に思いを伝えると言う事は、とてつもない霊力が必要になるんだ。
まだ生霊と呼ばれる、生きている人間の霊の方が力は強い。
それでもあまり聞かない事例だね。ともかく現象や痕跡を残すと言うのは、信ぴょう性も低い上に、残念ながらほとんど無くて、体験者は霊能力者だけに視えていたようなものばかりなんだ』
『となると、やっぱり……霊には関係なく人間がメールを打っているのか』
死んでいる人間よりも、生きている人間のほうが怖いとは良く言ったものだ。死者の多くは生きている人から認識される事はない。
そんな彼らが相手に言葉を伝える、文字を残す、となるとどれだけの力が必要になるのだろうか。人とは別の次元にいる彼らが、文字で思いを伝えられるとしたら文字化けが精一杯かも知れない。
だけど僕の霊視からすると、間違いなく霊的な何かが関わっている。
『――――例えば、取り憑かれて本人が無意識に文字を書き残し、メールを送信している可能性はあるかも知れないよ』
『だとすると、自分宛にメールを送信してる事になるよね。そうなったらあの都市伝説の中にもその事も入ってないと無いとおかしくないですか? だってかなり怖いもん』
梨子の考察は鋭い。
僕はその掲示板を見ていないけど、それなら自分のアドレスから自分宛にメールが送られてくると言う、恐怖のポイントを語らないのはおかしい。
都市伝説、という言葉に反応した間宮さんに僕は説明した。もちろんと言うべきか、やはりと言うべきか『闇からの囁き』の都市伝説を知っていた。
『去年からオカルト掲示板で流行っていたね。
ああ……二人は知らないかい? 洒落にならない怖い話、と言う意味でね。オチが中々良いなと』
『そ、そんなのあるんですか……。間宮さんは、闇からの囁きは創作で、メールは
オカルト話に火が着きそうになり、僕は
『うーん。僕はオカルト
『どいう事なんですか? 間宮さん』
『確かに去年から掲示板で噂が立てられて考察されたりしていたけど、書き込んだ本人だけしか『闇からの囁き』のメールは来てないんだ。だから、一時期盛り上がったけど、今年に入る頃には、もう掲示板の人々に飽きられているようだったよ』
チェーンメールのような『闇からの囁き』と言う悪趣味なメールを受け取ったのは、掲示板に書き込んだ人物ひとりだけ。
肯定派の間宮さんははっきりと言わないが、創作を疑っているんだろうか。
進展もなく、飽きられていたこの話題だったが、坂浦さくらさん宛に『闇からの囁き』のメールが届き、サイトにアクセスして自殺配信をすると言う痛ましい事件が起きた。
そしてこの都市伝説は再燃焼する。
さらに言えば、おおやけになっていないが曽根あいらさんも、あのWEBサイトにアクセスして自殺をしている。
『それって……この気味の悪い都市伝説を、もっと世の中に広めてやろうって思って、メールを送った愉快犯がいるっていうこと?』
『いや、梨子。もしかすると、この都市伝説を利用して、彼女達に嫌がらせをしたのかも知れないよ』
どれもこれも
なんらかの強い霊力や悪霊が絡んでいる事には間違い無く、その中に見えない
思わず僕は頭を抱えた。
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