3.設定を決めよう(3)


場所はあなたの部屋。

革のビキニを着て、あなたのワイシャツを羽織った青い髪の毛の美少女,メイがあなたを見つめている。

あなたは聞く。「ところで、なんでそんなビキニ着てるの?ラムちゃんでも意識してる?」


メイは意外そうに答える。「知らないの?これはビキニアーマーよ。」

ビキニはわかるけどアーマー?モビルアーマーみたいなものかな。

「要するに、男性に対してサービスするためかどうか知らないけど、強い女戦士がよく着てる鎧よ。」


「でも、それだけしか隠さないんじゃ役に立たないんでは?」あなたは尋ねる。

「まあ、実用的ではないよね。でも、異世界だから、これを着るだけで防御力が増して、肌には強いコーティングがかけられたり、とかそんな設定を作る人もいるよ。そうすれば一応説明つくでしょ。結構異世界ものの女戦士は肌を出してるよ。男性はそのほうが嬉しいしね。たくさん出てくれば今夜のおかずにも困らない。


あなたは動揺する。「え、い、意味がわからないよ…」

メイは言う。「あなたのパソコンの『社会保障制度資料』の中に入ってるものはなあに?」

あなたの秘蔵のファイルが集まったフォルダのことだ。


「あのフォルダ、まとめて消去もできるよ。そうしてあげようか。」

あなたは、メイに逆らえないことを知る。

「メイさん、よろしくご指導ください。」


「というわけでこれから設定についてもっと細かく見ていくね。」

これからが大事そうだな。


「異世界に転移して何をするのか。それが物語の設定よ。主題といってもいい。さてシンくん、あなたは異世界に行って、何をするの?」


「って突然言われてもねえ。とりあえず生活を確保する。」

「なんか夢が小さいわねえ。男なら世界征服くらい言ってみなさい!」

メイが何故か焚き付けてくる。


「ちょっと待とうよ。正義の味方なんだからそうはいかないよ。」

「べつに正義なんかどうでもいいよ。国が二つあれば正義は二つ。国だけじゃない。対立は世の中に山ほどあるし。魔族にも魔王にも正義はあるんだから。そんなの、愛は勝つ、ってのといっしょ。愛と愛がぶつかり合ったらか勝のも負けるのも愛。それを修羅場といって…」


「それ関係ないよねっ!」

あなたは叫ぶ。


ちょっとの間があり、その後メイが平静な顔でいう。「シン君はまともに人の話を聞かないで脱線するね。よくない癖よ。まずは話を戻すわ。まあ、もちろん異世界で修羅場ってのもあるんだけど、これは応用編ね。俺TUEEEの主人公がハーレム作って、女同士で争うのはまあ定番だし。シンくんも女好きね!」


あなたはちょっと怒る。「それ違うよね。話を脱線させたのはメイだよね。」「男はそんな小さいこと気にしないの。気にするとハゲるよ。」

メイはしれっと言う。


ハゲる?そんなことはない。あなたは毎日、アマゾンで買った育毛シャンプーを使っている。ちょっと抜け毛が気になるだけだ。」


メイは続ける。「というわけで、あなたは異世界に一人召喚された。召喚したのはだれ?王様がいい?」


あなたは答える。「どうせならきれいなお姫様がいいな。勇者様、とか言ってキラキラした目で憧れと愛情をストレートにぶつけてくる」


メイ「憧れの対象として召喚したらあなたが出てくるのよ。失望と義理立てで嫌々説明するにきまってるでしょ。奥に引っ込んで部下のおっさんに任せるかもね。

…突然呼んでおいてそれはないだろう。

「だいたい転移なんだから今のあなたが行くのよ。ぼさぼさ頭で無精ひげ、首ののびたTシャツとよれよれジャージ。こんな男見て、だれが一目ぼれするの?どうやったらモテモテになるのよ?ありえないでしょ。」

勘弁してください。転移するときには最低限ちゃんとした服を着ているとき、という設定にしよう。


メイ「まあ、最初は冷たくしていて、そのうちにあなたの良さがわかって愛情を注いでくる、いわゆるツンデレなんかのほうが読者受けはいいと思うよ。」


あなた「よしわかった。この高慢ちきなお姫様をデレさせる。それを目的にしよう。」


メイ「だ~か~ら~。それは途中のエピソードであって、全体の目的決めないと。」


あなたは答える。「じゃあ、シンプルにいこう。いままで言われてきたことをまとめるね。主人公は一人、異世界の姫に召喚された。召喚された理由としては、やはり世界に魔王が誕生して、魔族を引き連れて街を襲い、人類を脅かしてる。魔王を討伐して世界平和を達成するため、姫が異世界から勇者を召喚した。」


うんうん。なんか小説っぽいぞ。

メイは続ける。

「でも、途中で死んじゃうかもね。シンは弱くてヘタレだし。」


…それはないだろう。まあ、現実世界ではその通りなんだけど、空想なんだから強くても持ててもいいじゃないか。


「途中でスライムが現れて、シンに飛びついて。『シンが死んじゃった』…これで終わり。こんな小説でもいいかもね。:


それは、あんまりだよね。

そういうときには、次のシーンで「おお、シンよ。しんでしまうとは、なさけない。」とか言われて生き返るんじゃないの?


メイ「そんなところね。魔王を倒すまでは、地球、というか今の世界には戻れない。倒すのが戻るための条件、という感じでいいわ。」


あなた「でもそうしたら姫と結ばれないじゃん。」

メイ「ま、その辺は設定次第ね。姫だけじゃなくてハーレムだっていいんだから。」


おお!憧れのハーレム! 綺麗な姫とかわいい女の子とエルフとケモミミを侍らせるってやつだな。





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