1. 設定を決めよう
あなたは、異世界小説メイカーのメイと対峙している。メイは、革のビキニにワイシャツ姿だ。
メイが始める。
「ところで、あなたの名前は何?なんて呼べばいい?」
あなたは答える。
「ペンネームでいいんだよね。たとえば漆黒の死刑執行者(エクセキューショナー)とかでも?」
メイ「そんな厨二病全開の名前で対外的に名刺出したりする気力があるなら、どうぞ。あなたはベストセラー作家になるんですよ。なんとか賞受賞者のこの方が、漆黒のエクセキューショナーさんです~~なんてとか言われて人前に平気で顔を出せます?」
あなた「… とりあえず、シン、としておいてください。お願いします。」
メイ「それってシン・エヴァンゲリオンとか碇シンジから?それともシンゴジラから?それともシン・アスカ?シン・カザマ?もしかしてジョミー・マーキス・シン? …まあいいでしょう。シン、よろしくね。」
あなた「は~い」
「まず最初は、異世界小説ってなあに?シンくん、答えて」
あなた「そりゃ、異世界を舞台にした小説でしょ」ぶっきらぼうに答える。
「そうなのよ~。で、異世界って言ってもいろいろあるんだけど、今回私がメイカーとしてあなたを指導するのは、とりあえず今の日本で売れる可能性の高い、テンプレものね」
「テンプレって何のこと?」あなたはとりあえず聞いてみる。
「テンプレート。まあ、お約束、みたいなものね。とりあえず一般的な読者なら説明をあまりしなくてもわかってくれるような事項ね。もちろん細かい設定はいろいろ自分でするんだけど、おおざっぱには説明が不要なものよ。たとえば、冒険者ギルドとか、風魔法とか、ポーションとか、ゴブリンとか。まあ、個別の単語、というよりは設定のほうだけどね。ゴブリンは雑魚モンスターだとか、勇者は魔王と戦うとかね。」
「で、どんな異世界を考えれば?」
メイ「だから、みんながとりあえず理解できるものといえば、やっぱり剣と魔法の世界ね。その世界は日本とちがって、魔法が使える。魔法と剣術を使って強くなり、モンスターと戦う。そんな感じかしらね。時代的には西欧の中世とか近代くらいで、まだ産業革命とかはないころね。機械がないかわりに魔法が発達してる、ってところかしら。」
あなた「まあ、なんとなくは理解できます。」
メイ「読者に親切にするために説明をするわけだけど、ある程度端折ったとしても、読み手が理解してくれるってのはメリットね。そして、私があなたに書いてもらうのは、あなたの物語よ」
あなた「ぼく?」
メイ「まあ、あなたじゃなくてもいいんだけどね」あなたはずっこける。
「主人公を決めるってこと。できればあなたが感情移入しやすいように、あなたに近い人を設定するの。または憧れの姿ね。そのほうが楽しいでしょ。もちろんアンチヒーローって形もあるんだけど、それは応用編ね。」
あなた「ところで僕の設定ってなんだっけ?」
メイ「実はいままで意図的にぼかしているんだよ。高校生でもニートでもサラリーマンでも大丈夫なようにね。」
あなた「…」
メイ「主人公を決める際に、もう一つ大きな決断をしないといけないの。異世界小説には大きく分けて二つあるんだけど、それが何かというとね。転移と転生なのよ。違いはわかる?」
あなた「転生はきっと生まれ変わるんだよね。転移ってのは移動するだけ?
メイ「その通り。転移の場合は、異世界に飛んじゃったんだけど、いつか現代世界に帰る、とか条件をかなえたら帰れる、とかになるの。転生の場合は、生まれ変わりだから、まあ現世では死んじゃって、記憶だけ残して異世界に生まれ変わるパターンね。
あなた「どっちがいいんですか?」いつのまにか敬語になっている。
メイは答える。「どっちでもいいよ。好きなほうを選んでみてね。」
あなた「とりあえず、いま死にたいとは思ってないから、転移にしときます。」
メイはにっこり笑い、「じゃあ、転移ってことで。」と言う。
「転移の場合、まずは人数を決めないとね。」メイがいう。
「人数?僕だけじゃないんですか?」あなたは疑問に思って聞いてみる。
「転移の場合、一人とは限らないの。原因にもよるけど、複数が転移することも多いよ。たとえば、友達と歩いていたら突然まとめて転移するとか、学校で教室のクラスメート全員が転移するとかね。 よくあるのは、主人公がクラス転移して、そこで女の子の同級生と異世界生活を通じて仲良くなっていくとかね。」
「うーん。クラス転移ねえ。いまは学校行ってないからちょっとぴんと来ないなあ。」
「じゃあ友達は?」
この質問に対しては、なぜかへんな間ができる。
「あ、これは聞いてはいけない質問だったみたいね。撤回するわ。」メイがあわてて言う。
「あと、巻き込まれ転移ってのも定番よ。」メイが付け加えた。
「巻き込まれ転移?何それは?」あなたにはちょっとぴんとこない。
「つまりね。目的があって人が呼ばれて転移するんだけど、たまたま通りかかったとかで、呼ばれる対象じゃないのに巻き込まれるパターンね。イケメン男子を呼ぼうとしたら、たまたま通りかかったあなたも一緒に転移しちゃうとか。」
「巻き込まれた人はどうなるんだ?」あなたは興味をもって尋ねる。
「まあ、たいがいはろくな目に合わないわね、最初は。だって目的外だもの。下手したら秘密を守るため死刑よ。まあ、巻き込まれパターンでは、逃げ出したりして距離を取って、そのうち強くなるとか独自の生活を始めるようね。死ななければ。」
あなた「…おい、最初からそれを言えよ。転移だって死ぬんじゃないか。」
「そりゃあ、異世界だもの。剣と魔法の世界なんだから、剣や刑罰で首ちょんぱなんて日常茶飯事よ。気にしない気にしない!」…他人事だと思って何言ってるんだこいつ。
「少なくとも巻き込まれは無しな! あれ、そもそも転移って誰かに呼ばれるのかい?」
「転移にもいろんなパターンがあるけど、一番多いのは、異世界からこっちの人間を勇者として召喚することね。」
「召喚?」「そうそう。魔王が現れたとか、モンスターが多くて対応できないとか、そんな人知を超えるような事項に対して、異世界から勇者を召喚することで対応するの。」
あなたは、自分が勇者になれるのだろうか?と自問する。
「じゃあ、ほかのパターンは?」
「次元の裂け目とかができて、そこに入り込んじゃうケースもあるわ。ここを通ったら異世界、とか単純にドアを開けたら異世界だったとかね。ナル〇アみたいに、タンスの引き出しから異世界へ、っていうのもあるわね。」
何かありきたりだなあ、とあなたは思う。もちろん、勇者召喚による異世界転移なんてのはもっとありきたりなのだが、あなたはそれを知らない。
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読んでいただいて、ありがとうございます。
エヴァやゴジラ以外の「シン」がわっかるかな~?わっかんねえだろうな~。←これもわかる人がいるのだろうか?
「今日から幼馴染」もよろしくお願いします。
今日から幼馴染! 初対面のお嬢様がなぜかぼっちの俺の幼馴染だと言ってきた件
https://kakuyomu.jp/works/16816410413933088813
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