目覚める力
…力が欲しいのですか…
神崎ひかげは己の内から聴こえてくる声に耳を傾けていた。
…力が欲しいのですか…
力が欲しい、と神崎ひかげは切に願う。
…力が欲しいのなら、授けましょう…
神崎ひかげは、己の内から力が溢れてくるのを感じていた。
******
エンプティは神崎ひかげの四肢を、腹を撃ち抜いた。さすがに、これで立ち上がれる人間はいない。
しかし、神崎ひかげは立ち上がる。その目には闘志が宿っていた。
「ついに、彼女が覚醒したのか。逃げるかな。」
エンプティは呟く。
「まあ、逃げられないか。」
ハァー、と神崎ひかげは大きな息を吐いた。部屋中に酒の臭いが充満する。
「まさか、アルコールを自己生成したのか!?」
エンプティは神崎ひかげを観察する。マグナムで開けられた穴は、どれも完全に塞がっていた。
「ヤバッ」
と、エンプティは声に出して横へと跳んだ。ドゴン!!と後ろから轟音が響く。
「化け物が!」
エンプティは脇腹の肉をえぐられていた。その傷を無視して後ろを振り向く。コンクリートの壁を壊して突き破った神崎ひかげが戻ってくる。
土煙の中の人影が見える。ギラギラとした神崎ひかげの目が光る。
(次は交わせんか。)
痛みは無視できる。だが、身体の損傷を無視して動くことはできない。当たり前の話だ。
エンプティはリボルバーをホルスターへと戻した。西部劇の早撃ちの構え。最初に覚えた技がこれだった。それを今、エンプティは思い出した。
土煙の中で蠢く神崎ひかげ。酒の臭いが濃くなっていく。傍若無人の酩酊の王がこちらを睨む。
腰を落として迎え撃つのはエンプティ。恐怖が彼を奮い起たせる。銃火器狂の男が最後に頼るのは、最初に手にした愛銃のみ。
ダアアン!!!
と、轟音が鳴る。フルバーストショット。装填された全ての銃弾を一撃で放つリボルバーの最終奥義。
一直線に並んだマグナムの弾丸は、向かって来る神崎ひかげに弾かれて、コンクリートに埋まっていった。
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