プロジェクト・HINATA
あぁ、関わりたくねえな。
スキンヘッドの男は心の中で愚痴っていた。この男は秘密結社『青蜥蜴』の諜報員。組織から命じられればどんな場所にも潜入するし、そもそも命令に口を挟める立場でもない。
しかし、こと『プロジェクト・HINATA』に関しては嫌な予感がしていた。この計画はボスが新しくなって始まったものだ。そして、この計画の存在を知っている者はボス直系の幹部に限られている。
とある事情で、この計画の存在を知ってしまったスキンヘッドの男は今回の作戦に組み込まれてしまったのだ。もう逃げることも叶わない。
「
スキンヘッドの男は目の前で銃の手入れをしている男に話しかけた。
「分の悪い賭けは嫌いじゃないんですよ。それとは別に、勝ち目のない賭けはつまらない。」
「つまり、勝算はあるってことか。」
「無駄に研究所の所長をしていたわけじゃないよ。勝算は、ある。わずかな可能性だけどな。」
エンプティと呼ばれた男はライフルの銃弾を見せつけた。
「これにはナノマシンが詰まっている。アルコールを分解して無害化するやつだ。」
「健康に良さそうだな。」
スキンヘッドの男は冗談を言う。神崎ひかげの情報を提供したのはこの男だ。その効果が神崎ひかげには致命的になりえることはわかっていた。
「これで神崎細胞を抑えられる。後は奴の自力に俺が勝てるかどうかだ。」
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