第3話 運命の悪戯

第2話

「はぁ、早く高校を卒業したいな・・・」


 あの後、何とか黒鉄君のグループ全員分の購買を購入することが出来て、皆にそれを渡した後、僕は一人寂しく、お弁当を食べた。 

 今日は、学校が半日授業だったこともあり、お昼休みが終わった後は、特に誰かに命令されることはなく今日の学校が終わって、今は一人で家に帰宅している途中である。

 偶に、黒鉄君たちのグループと帰ったりすることもあるのだけれども、その時は、僕は荷物持ちか、財布代わりにされるので、今日はその呼び出しもなく、ほっとしている。

 折角、午後が丸々空いたから、普通なら、部活に専念したり、誰かと遊びに行くものかも知れないのだけれども、生憎僕は部活も入っていなし、僕が通っている学校では友達はいないので、誰かと遊びに行くことも出来ない。もし、部活に入っていたら、僕の高校生活も変わっていたのかもしれないのだけども、たらばのことを考えても仕方ない・・・

 でも、こんなことを考えているなんて、だいぶ今の状況が心に来ているんだろうなあ・・・


 ・・・、うん、折角空いた時間、家に直行するのも、勿体ないから、久しぶりにカラオケでも行こう

 そう思ったら、吉日だと言わんばかりに、僕はカラオケ店に向かっていった。


 僕の住んでいる所は、田舎と都会とが混ざり合ったような街になっていて、駅周辺には、総合アミューズメントやデパートなどが建っており、カラオケ店も何店舗かあるのだけれども、僕がよく行くカラオケ店はその総合アミューズメントの中にある。


 僕はその施設に到着して、中に入ってみると、今まで制服姿で来ることがあまりなくて、これまで気にしていなかったけど、改めて見ると、僕と同じ制服姿の女の子が何人か来ていた。


 ・・・う~ん、考えてみれば、当たり前のことなのに、なんで失念してたんだろう。そりゃ、短縮授業の後にカラオケ店に来る人はいるよね・・・

 今どき1人カラオケとかも普通だから、そんなに気にしなくてもいいかもしれないけど、なんか、気まずい気分になっちゃうな・・・

 ただ、僕の間違えじゃなければ、クラスメイトという感じでもないから、向こうも僕の事なんて、分からないでしょ。


だって、女の子たちの髪がかなり特徴だから。銀髪に金髪、赤に水色って中々凄いなぁ

 僕は、そんなことを考えながら、その女の子たちの後ろに並んで、自分の順番が来るのを待った。


 僕は受付にて案内された部屋に入って、歌う準備をしていた。

 僕は1人で歌を歌うときは、前髪を上げて、眼鏡をはずして歌っている。そうするのが僕にとっては、一番歌いやすいからだ。誰にも見られない空間だったら、目線とかも関係ないしね。

 よし、準備も整ったし、今日は思う存分歌うぞー!!


「~~~

 ふう、やっぱり、この曲は名曲だよね

 歌って、すごい心に響くもん」


 僕が今うたったのは、社会現象にもなっている、某人気アニメの主題歌である。

 僕の声は、幸か不幸かそこまで、声変りをしていなくて、女性シンガーの曲でも難なく、歌うことが出来る。

こればかりは僕の体質に感謝するところな。どうせ、歌うなら原曲で歌いたいもんね。

 このまま、もう一曲歌おうと思ったけど、コップの中身が空っぽになっていたので先に飲み物を先に注ぎに行こうかな。折角、ドリンクバーにしたんだから、少しでも元を取らないと!

 そう思って、コップを持って、ドアに向かった時に、いきなりドアがバンッ!!と開かれた。え、な、何事!?


 僕は、いきなりドアが開かれた事に驚いて、その場で硬直していたところ、開かれたドアから、勢いよく、こちらに入ってくる人影の姿が・・・


「ねー、今の曲を歌っていたのはあな・・た・・・」


「・・・」


「・・・」

 

 いきなり、入ってきた人は何か話しかけてきたみたいだけど、僕はその言葉が耳に入らず、その人に見惚れてしまっていた。


 銀髪のセミロングヘアで三つ編みの編み込みがされており、アイドル顔負けの愛嬌さがある顔、モデルみたいなスレンダーな体つきで、まるで、美の女神が降臨したのではないのかという錯覚に陥ってしまった。


 (え、こんな綺麗な人、初めて見たんですけど!?本当に僕と同じ人間なのかな・・・?

あれ、容姿にばかりに目が行ってしまっていたけど、僕と同じ高校の制服を着ている!?

これ程の美人さんなら噂になっても可笑しくないのに、今まで知らなかったよ

やっぱり、僕って・・・)


 僕が内心でそんなことを考えていると、僕に声を掛けてきた女の子は、なぜか目を見開いてこちらを見つめていたけど、何を思ったのか、こちらにどんどん向かって歩いてきた。


え、なんでこっちに向かってきているの!?

その子が僕のところまで来ると、いきなり、両手で僕の肩をつかんで、愛嬌のある顔を僕に近づけてきた。え、怖い怖い!?僕何されるの!?


 僕はそのことに内心、恐怖で震えていると、その子は興奮した様子でこう話しかけてきた。


「ねぇ、君、すっごいかわいいね!!

なんで、男の制服なんて着てるの!?

コスプレとかするのが趣味なのかな!?」


・・・可愛い・・・?

・・・あ、しまった、僕今、眼鏡を外して、前髪を上げているんだった!?

後、この子の口調からして、僕を、女の子と誤解している!?

早く、誤解を解かないと!?


「ち、違うよ!?

僕は、男だよ!?」


「え~、嘘だ~

コスプレがばれて、恥ずかしいだけなんでしょ?大丈夫!!

私、そうゆうのに理解あるから!!」


 駄目だ、この子僕の話を聞いてくれい!?

 この子を納得させるための方法は何かないかな!?

・・・そうだ!?

 これだったら、彼女も信じてくれるはず!!


 僕は、この状況を解決してくれるであろう、アイテムを懐から取り出して、彼女に見せつけてみた


「これを見て、僕は男だよ!!」


「お~、迫真の演技だね!

もう、そこまでするなんて、よっぽど、コスプレのことがバレたくないのかなぁ~

ただ、折角ですから、乗ってあげようではないか!!

どれどれ~・・・・・・」


 彼女は、まだ僕がコスプレをした女の子と疑っておらず、ニヤニヤした顔でこちらを見ていたのだが、僕のセリフと行動で、僕は演技をしているんだと解釈してくれて、僕が彼女に突き出したアイテムを見てくれた。

 彼女はそれを見た最初は、変わらず、ニヤニヤした顔だったけれども、途中から真顔になって、それを見つめていた。

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