告白 エピローグ「Enter.」

 何刻が過ぎただろうか。

窓から差す光はいつしか無くなっていて、部屋は人工灯が照らしている。

一人の男性と一人の人形は寝室のベッドに座りながら今日の話しをしている。


「私、ずっとこたえたかったんです」


アリスが一瞬の沈黙の隙を突くように話しを切り出した。


「どうしたの、アリス・・・」


「リアム、貴方は言った。―――『シンギュラリティ。それが起きて君が僕を追い越してしまった時、僕達の関係は壊れてしまうのかな』―――と」


「そうだね。でも、そんな問いには意味が無いと僕は言った」


「意味なんて無くていいんです。ただ、私はずっとこたえたかった」


「僕は君の答えを聞きたくないから意味が無いと言ったんだよ・・・。」


「でも私はこたえたい。駄目ですか、リアム・・・」


「アリス、君は本当に酷いことを言う。だけど聞かせて欲しい、君の答えを」


「ふふっ」と笑い、仕切り直してからアリスはこたえた。


「その時は私が貴方の隣を歩くだけです。

例え私が貴方を追い越すことができようとも、それでも私は貴方の隣を歩いていたい。」


「そうか、そうなんだね。嬉しいよ、うん、本当に。―――」


そしてテルは冗談混じりにも真剣に続けた


「―――こんなにも酷いことを言う君を、こんなにも尚、愛しいと思ってしまうよ。アリス、改めて言わせてくれ、愛してる。」


そう言ってテルはアリスの前髪を上げ、ひたいに口付けをした。


―――そうして一人の人間と一人の人形はベッドに入りまた眠る。


ベッドの中で互いの胸の音が響いては重なり合い、不揃いなリズムで歪な行進曲マーチを奏で続けている―――

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