第184話 課税法案
私たちは、法案を完成させた。
さすがに国の法律は、地方庁のものと比べて複雑だったけど、時間をかけて作ることができた。
これをもって財務省に向かう。財務大臣はフリオ閣下が務めているから相談しやすいのよね。特に、財務省は内務省と並ぶ省庁の中の省庁と言われるほど、エリート官僚が集まっているわ。彼らの協力を仰げれば、流れは変わる。
「お待たせしました、ルーナ議員」
通された待合室には、初老の男性が来てくれた。
彼が財務省の総裁と呼ばれるほどのベテラン官僚。
モウラ財務次官。イブール王国史上最高の秀才と言われている人物よ。
「モウラ次官、お忙しいところ時間を作っていただき恐縮です」
「いいですよ。あなたのお父様には昔、お世話になったことがありますから。お会いできてよかった」
少しだけ表情を崩した次官は、とてもやさしそうだった。
「法務のスペシャリストでもあるポール事務官も同席させていただきます。私以上に法務については詳しいはずですからな」
「ポールです。議員、よろしくお願いします」
まさに、財務省の頭脳ふたりが私の相手をしてくれているのね。緊張するわ。
「こちらが、私が考えた法律案です。おふたりに見ていただきたくて」
ふたりは資料を受け取ると、すぐに読み始めた。とても緊張感がある瞬間ね。国を代表するくらい優秀な官僚が私の法案をチェックしてくれている。
ペンでチェックを入れている二人は真剣そのものだった。
30分ほどでふたりはチェックを終えた。早いわね。一体どれだけの法案が頭の中に入っているのかしら。
「これはあなたが作ったんですよね、議員?」
ポールさんは少しだけ語気を強めた。
「はい! 知り合いの人たちに協力してもらいましたが、基本的には私一人です。どうでしょうか?」
「恐ろしいほど高い完成度です。いくつかの言い回しやほかの法案との整合性を保つための修正は必要ですが……ルーナ議員は、法律を学んだことが本当にないんですか?」
「ええ、バルセロク地方知事になってから、独学でした。向こうではいくつも法案を作らなければならなかったので、部下と一緒に数年間もまれ続けました」
「ポール、これなら少しだけ修正すれば元老院に提出できるものになるだろう。さらに、内容もいい。"関税法の一部を修正し、交通路整備のために使う”。これなら庶民に重い負担をかけることなく、海外からの嗜好品を少しだけ課税することで、交通路を整備できる」
「はい、次官。交通路を整備できれば、人や物の動きが活発になり経済が発展する。そうすれば嗜好品の消費も増えて、税収も増えていく可能性が高い」
そう、今回は庶民に負担をかけることなく、貴族などの富裕層からお金を取ることで、王国全体を発展させることができる。税収が増えれば、道路や学校の整備にお金を回すことができ、国全体が裕福になるのよ。
「議員、こちらからもお願いします。私たちも協力させてください!」
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