第180話 祝いの朝

 私は目を覚ます。あの丘から帰ってきた後、私たちは夜な夜なずっとお話をしていたわ。思い出話、旅行したい場所、好きな料理……


 いつもは仕事の話ばかりしている私たちだけど、今回は同じ年代の恋人としてお話をした。だから、昨日は特別な日だった。


 恋人としても、男女としても……


「起きて、アレン。もう朝よ!」

 私がそういうと、彼は横で目を覚ます。お酒をたくさん飲んでいたから少しだけ調子が悪そうね。


「ああ、ルーナ。おはよう」

 そういうと、私たちはキスをする。


 昨日の夜からキスをするのが当たり前になった。


「今日は王宮で就任式ね」


「ふふ。昨日、大冒険してきたばかりだから、起きるのがつらいな」


 私たちは深夜に王宮に戻ってきたわ。ふたりで人目を忍んで部屋に戻るのはなんだかドキドキした。アレンの魔力道具がなければ部屋に戻れたかわからない。


「朝食まであともう少しだから、早く自分の部屋に戻らないとダメですよ、アレン?」


「そうだね。名残惜しいけどそろそろいかないと……だから、手を離してくれないかな、ルーナ?」

 私は無意識で彼の手を握っていたらしい。


 私が手を離すと、今日2度目のキスをする。

 そして、ゆっくりと私たちは抱き合った。


 ※


 無事に元老院議員就任式は終わり、私たちは自由党の本部へと顔を出す。

 フリオ閣下たちが私たちを待っていてくれた。


「よくやってくれたな、ルーナ副総裁・アレン総務局長! ふたりのおかげで命拾いしたよ」

 フリオ閣下は元気そうに笑っていた。


「フリオ閣下もご無事で何よりです。お怪我はありませんか?」


「ああ、ぴんぴんしているよ。おかげで監禁先でゆっくり昼寝ができた」

 そう言って冗談を飛ばすフリオ閣下を見て私たちは安心した。


「それはよかったです。それで自由党の幹部会議を招集とのことでしたが、なにかありましたか?」


「ああ、今後の政局についてみんなで確認がしたくてな。二人が中央にいる今が最大のチャンスだろう」


 自由党本部の会議室には、幹事長のフェルナンド=エンリケス子爵(元・庶民党幹事長)と政調会長のアラゴン=レオン男爵(元・国民党副代表)がすでに座って待っていた。


 自由党の最高幹部が勢ぞろいするのは珍しい。

 よほど、大事なことなのね。


 総裁・副総裁・幹事長・政調会長・総務局長。

 この5名が現在の自由党執行部だから……


「それでは諸君、幹部会議を始めたいと思う。議題は、事実上保守党の中心人物となったクルム王子からとあることを打診された。それは、"大連立"だ。今回はそれを受け入れるかどうか決定したい」


―――

(作者)

明日は更新お休みです。

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