第170話 クーデター後
地方庁の会議室で私と副知事は状況をまとめていた。
アレンとシッド将軍が王都を正式に奪還したわ。
すでに、クーデター軍は降伏の意思を表明していたし、もともとは同じ軍隊だからスムーズに事は進んだ。
クーデター軍の残った幹部はすべて拘束したけど、兵隊の人たちはすぐに原隊に返して待機させた。
そして、元老院にいた政府首脳を解放したわ。
王都無血開城。
これが達成されたことで、私たちの目的はすべてクリアしたわ。
「クリスタル川の決戦による地形を生かした少数兵力による大兵力の包囲殲滅。そして、交渉による敵本拠地の無血開城……まさに、歴史に残るみごとなスピード解決でしたな」
ロヨラ副知事は笑う。
「ですが手放しには喜べません。犠牲者がいますからね……」
王都からは、軍務次官と数人の元老院議員が含まれる行方不明のリストの報告がされた。
そして、その中の名前を見て、私はひとつの確信が生まれた。
答え合わせをするために、あの男に会いに向かう……
※
「どうしたんだい、ルーナ宰相臨時代理。ふたりで会いたいなんて珍しいな」
クルム王子は笑う。冷たい笑顔で。
「殿下にご報告があります。奪還した王都からもたらされた情報です」
「ほう」
「クーデター発生時に抵抗して生死がわからない元老院議員と政府高官の名前が判明しました。その中に、殿下の弟君であるアマデオ殿下の名前が……」
私がその事実を伝えると、彼は驚いたように目を見開き天を仰ぐ。これは事実上の死亡報告だから。
「そうか」
ぼう然とした顔を維持し続けている。まるで、弟を失った兄のようにね。
「アマデオ殿下は、クーデター発生時に元老院を脱出し、軍務次官と合流。彼らは軍務省に立てこもり、そこで玉砕したと思われます。軍務省は炎上した影響で正式な死亡確認はできておりません」
「王族として、立派な最期だな。兄として誇らしいよ」
「ええ、そうですね」
私は生返事をする。
「だが、これで我らの正義は示せた。弟も向こうで喜んでくれているだろう。さぁ、我々も王都に向かおう」
目を閉じて気分を切り替えた王子は私にそう言う。
でも、私はここで終わらせるつもりはなかった。
ずっと気になっていたことをここで追及する。
「殿下、なぜあなたはアマデオ殿下が死亡していると確信しているんですか?」
そう、まだ行方不明の段階なのよ。でも、彼は弟が死んでいると確信して疑っていない。
「ふん、だってそうだろう? この状況では、行方不明は死亡と同義だ」
「では、質問を変えます。もしかして、あなたは弟君が既に死亡していることを知っているのではありませんか?」
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