第155話 作戦決行
「こちらスカル3。大使館付近に特に目立った様子はありません。護衛も入口に2名だけが確認できます」
ついに、潜入作戦が始まった。俺は、部下2人を民間人に偽装させて帝都に侵入させる。
ひとりはイブール王国の駐ヴォルフスブルク帝国大使館に。
もうひとりは、迎賓館に。
とりあえず大使館の可能性は低いな。なら……
「こちらスカル1。了解。協力者に連絡をとった。そちらと、接触を図って情報を確認してほしい」
「了解」
これで候補は迎賓館だな。そこにいてくれればいいのだが……
ヴォルフスブルク帝国の王宮にでも移送されていたら奪還は不可能に近い。
「こちらスカル2。迎賓館前に到着した。すごい警備だ。馬車も3台入っていくのが見えた。灯りはどの部屋にもついている」
「了解。偵察を続けてくれ」
やはり、迎賓館にいるのか? しかし、これが偽装の可能性もある。問題はヴォルフスブルク帝国首脳部がどのタイミングでクーデターを知ったのかだ。俺たちよりも後か先か。
このまま時間が過ぎれば、状況はどんどん不利になる。
イチかバチかで迎賓館に突入するべきか。
「スカル3。いま、協力者と接触した。王子は昨日まで、迎賓館2階の中央の部屋で寝泊まりしていたらしい」
よし、大きな手掛かりを獲得した。今回の協力者はヴォルフスブルクの通訳だ。毎回、外交交渉の場で通訳を務める人だから信憑性のある情報を知っている可能性が高い。
「スカル2。2階の中央の部屋に注目してくれ。彼が窓際に立つかもしれない」
王子は考え事をするときに、基本的に動き回る。だから、窓際に彼が来る可能性は高い。
まさか、こんなところで近侍の時の経験が生きるとはな。
「こちらスカル2。殿下を確認した。くり返す、殿下を確認した」
よし。これなら希望が持てる。俺は、少佐と顔を見合わせてすぐに動き始めた。
いまごろスカル2も動いてくれるはずだ。
突入作戦は簡単だ。偵察部隊が魔力で、迎賓館前でボヤを起こす。
館内が騒然となったところを見計らって、空中より俺たちが2階に突入し、王子を確保する。
戦後の国際問題にならぬように、ヴォルフスブルク側の人間に死傷者を出さないように迅速に行動しなくてはいけない。
俺たちが空中から高速で移動し、迎賓館に近づくとすでにボヤ騒ぎの影響で迎賓館前は、騒然となっている。これで王子は手薄になっているはず。
俺たちは目だたないルートを選びながら、目的地に近づくと、木の枝に隠れて中の様子をうかがう。王子はまだ2階にいるはずだ。この状況で、下手に外に出たら危険だからな。
「この状況なら気づいてますよね、殿下?」
俺がそう一人でつぶやきながら、マジックアイテムを投擲する。
けむり玉だ。
「突入するぞ!」
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