第137話 変人教師?

 私は面接会場におもむいた。今回の採用者の人が起立して、私を迎えてくれる。


 一応は、最終面接と言うことになっているけど実際は地方庁幹部と教師の人たちの顔合わせの意味合いの方が強いわ。ここではよほどの問題がなければ、不合格になることはない。


 特に、目の前の受験生たちは、すでに筆記試験で優秀な成績を修めている。面接や経歴にも問題がなく、模擬授業のほうも評判がよかったわ。


「それでは、最終面接を始めたいと思います。1番の方から名前と志望動機を教えてください」


 私が笑顔でうなずくと、1番の男性がしゃべりはじめた。

 40代くらいの小太りの男性ね。優しそうな笑顔が特徴の人ね。

「1番、ウーゴ=ド=ルイと申します。私は前職は商人でした。今は引退しております。家業は息子に譲っておりまして――いまは悠々自適の引退生活を送っている身です。私は商業で財を築きました。その分野では、もうそれ以上の栄華は望めません。ですので、今度はより社会貢献をしたく志望しました。商売で培った実践的な知識を教えていければと思っています。子供たちに、魚を釣って与えるのではなく、魚の釣り方を教えて一生食べることができる大人に育てるのが、我々の使命だと思っています」


 さすがは、前評判が最も高いウーゴさんね。ほとんどの試験で2位に占めていた正統派。志が高く、前歴も申し分もない。


 貧しい家に生まれながら、奉公先の商家でかわいがられて、夜間に独学で勉強して叩きあがった努力家よ。息子さんに譲った会社は、輸入品の取り扱いで依然として急成長を続けている。


 人を大事にする経営に定評があって、不法な行為もせずに成り上がった怪物。


 彼には、外国語や社会の仕組みについての授業をお願いしたいと考えているわ。

 実地経験もあり、実績も十分。


 問題なく合格ね。彼には、新しく作る学び舎の学校長になってもらおうと思っているの。


 そして、問題は……


「2番、レオ=トルス。俺は、この国を変えるために、今回の応募に志願した」


 そうこの人よ。まだ、20代の地方貴族の3男。ぶっきらぼうで、不愛想。

 でもね……


 筆記試験と模擬授業で主席を取り続けている異能。

 いつもこんな態度なのに、模擬授業は言葉に触れていない子供たちを想定してまるで豹変したかのように、丁寧な教え方とわかりやすい独自アプローチをしていたらしい。


 担当職員が言うには、「彼は劇薬すぎて、私たちには判断できません。知事に、採用を一任します」ということらしい。


 彼はまるで私を試すように、目で笑っていた。



―――

(作者)

明日は更新お休みです。

次回は金曜日を予定しています。

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