第107話 宣戦布告
―イブール王国元老院―
「バルセロク地方知事のルーナ=グレイシアです。この度は、発言の場を
私は議会の聴講会に参加して海賊騒動の
「今回の件は、痛ましい事件でした。しかし、海賊団は壊滅させることができました。海運において最も巨大な抵抗勢力を、私達バルセロク地方の住民が団結しそれを
議会は拍手に包まれる。海上交通路の安全を脅かしていた大海賊団が壊滅したという事実は王国を熱狂させた。
准将は適切な指揮を評価されて
アレンの部下も同じように扱われる。
そして、コルテス家が独占していたバルセロク市の海運利権にもメスをいれることができるようになった。
宰相閣下にも許可されたわ。これでコルテス家を潰すことはできなくても大きなダメージを負わすことはできる。
そうすれば、クルム王子にも痛手。だって、王族は権威はあるけど独自に動かせるお金には制限がある。だから、王子は私の父を銀行のように扱っていたわ。今はコルテス家がそれね。
王族は王宮で贅沢な暮らしはできる。でも、彼らに自由にできるお金は少ない。なぜなら、王族のお金を使うためには国王陛下の同意が必要だから。下手なことをしてしまえば、それこそ失脚して追放される。
だから、コルテス家の財源に大きなダメージを与えればそれだけ王子が困るわ。政治にお金はつきものだからね。
「バルセロクは必ず復活します。いえ、前よりももっと素晴らしい場所になるのです」
私の演説は大きな拍手とともに終わりを告げた。
※
「いや、うまい演説だったな」
「今回の件の指導力も高評価だ」
「彼女は森の聖女と呼ばれていた時代から人気はあったが、今回の件でうなぎのぼりだ」
「あの若さで知事だ。間違いなく将来の宰相候補だろうな」
※
―保守党院内幹事室―
私は議会が終わるとそのままクルム王子のもとに向かった。もちろんアレンも一緒よ。王子は柔和な笑顔で私たちを出迎える。
「最高の演説だったじゃないか、ルーナ? 元婚約者として誇らしいよ」
「今回の騒動の黒幕が言っていいセリフじゃないですよ、クルム殿下」
「証拠は?」
この男はどこまでクズなのかしら。もうほとんど自供したものじゃない。
「今日は言いたいことがあって来ました」
「ほう」
「あなたは、王族としてふさわしくない行動ばかり取っている。本来守るべき民すらも自分の野望のために傷つけて命すらも奪う。目的すらも見失ったあなたにもう未来はない」
「ふん、面白いことを言うな。だが、未来ならあるさ。私は未だに次期宰相最有力でなおかつ将来の国王だ」
「そんなあなたが国王になれるわけがない。いいえ、なってはいけないわ。だから、今日ここで宣言をさせてもらいます。私があなたを止める。あなたを今の場所から叩き落としてやる。私はあなたに宣戦を布告します」
―――
(作者)
明日は更新お休みです。次回は金曜日です。いつも本当にありがとうございますm(__)m
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