第102話 絶望する海賊たち
―アレン視点―
私はルーナを病院まで届けた。見た感じは重いケガはないが先程まで敵に襲われていたんだ。無理をさせるわけにはいかない。
病院では、先に避難した職員たちに彼女は歓迎された。もう人心掌握は完璧だな。
本当はずっと寄り添っていたいが、私も自分の義務を遂行しなくてはいけない。市内の海賊の残党を
「じゃあ、そろそろ行ってくるよ、ルーナ? ここですべてが終わるときを待っていてくれ」
「アレン、無事に帰ってきてください」
「だいじょうぶだ。
そして、私は空へと向かう。愛する人を守るために……
―グラン船長視点―
「くそ、どうなってやがる。あんな空中浮遊できるなんて聞いてねぇぞ。こうなったら海に戻って逃げなくては……お前たち、こっちだ……あっ……」
俺は残存している部下をまとめて退却をしようとする。しかし、俺の周囲にいた5人の部下は次の瞬間に吹き飛ばされていた。
「ぎゃあああ」
部下たちの断末魔を聞いて俺はただ走った。止まっていたらやられる。
奴らは空中から強力な魔力攻撃で一方的に俺たちを
屈辱だ。小国の海軍に匹敵する戦力をもつ俺の栄光あるグラン海賊団が一方的にボコボコにされている。
何人もの人を殺してきた俺が今度は殺されのか?
嘘だろ。俺は今回の件で成功して海賊を引退して遊んで暮らすはずだったのに……
海まで走った。だが、海岸はさらに絶望的な状況だった。俺たちの船はすべて炎に包まれていた。海岸に漂着した部下のほとんどは捕まっている。
抵抗したと思われる海賊団の幹部は斬りつけられてこときれていた。
今まで作り上げてきた俺のすべてが失われていた。
もう仲間も船もそれに乗っていた財産もすべてが失われた。俺は政治家の甘い話にのってすべてを失った愚かなピエロということだな。
散々人に死を与えてきたのに、今はどうしようもないくらい怖い。
生き残る方法を必死に考える。
一台の馬車が見えた。どうやら混乱の中で乗り捨てられたものらしいな。馬は生きている。この一本の糸にすべてをかける。
まだ、市内は混乱しているはずだ。イブール王国の本隊が到着する前ならぎりぎりで逃げ切ることができるかもしれない。どうせ、捕縛されれば、厳しい尋問の後に処刑されるのは間違いない。ならば、山賊になろうが自由に生きられるならそれに越したことはないはず。
これは天恵だ。
俺は馬を走らせて市内を激走する……
ここで死ぬわけにはいかねぇ。
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