第57話 アレン無双
「ありがとうございます、アレン様」
私は彼にまた、命を救われた。王子に暗殺されそうになった時も、今回の件でも彼は常に私のために動いてくれる。
そんなおとぎ話に出てくるような騎士様がそこにいた。
「無事でよかった。一瞬で終わる。ちょっと待っていてくれ」
アレン様は私にそう言い残すと、暗殺者に向かって突進した。
「この怪物がァ」
刺客はそう叫びながら第二波の準備をしていた。賊の両手に魔力が集まっている。
でも、不意打ちで仕留めることができなかった刺客にもう勝ち目はなかった。
アレン様はすでに距離を完全に詰めていた。
騒然となる人間たちを物ともせずに、壇上から刺客の男に向かってとびかかる。
男は抵抗しようとしていたが、無駄だった。
アレン様の愛剣がさやに納まったまま男のみぞおちを強打した。
「ぐへっ」
男は苦しそうな声をあげて一撃で卒倒する。
「安心しろ。殺しはしない。お前には雇い主の情報を吐いてもらわないといけないからな」
無力化した男を取り押さえて他に仲間はいないか周囲を凝視するアレン様……
「大丈夫か……」
安全を確認してアレン様は私に目配せしてくれたわ。
よかった。アレン様にもケガはないみたいね。
会場もアレン様が敵を捕らえたことで落ち着きを取り戻す。
「強すぎる。狙撃魔法を真っ二つにしたぞ。不意打ちなのに……」
「それも遠距離にいた魔導士との距離を一瞬で詰めたぞ。あの距離なら剣士は圧倒的に不利じゃないのかよ?」
「知らないのか? カステローネの時は数人の魔導士をひとりで制圧したんだぞ!?」
「まさに、英雄だな」
※
その後、私たちは20分ほど質疑応答を再開し無事に会見を終えることができた。
その間、アレン様が暗殺者を尋問していてくれたけど……
「ダメだ。どうやら、口の中に隠していた毒のカプセルで自殺したようだ。なんの情報も吐かなかった」
会見が終了してアレン様のもとに向かうと彼は首を横に振っていた。
「どうやら覚悟の上の犯行だったみたいですね」
「ああ、でもあの状況下であんなことが起きたんだ。どんなに巧妙な隠ぺいを図っても間違いなく悪影響は生まれる。それにあの会見ではエル=コルテスをルーナと俺は完全に論破したんだ。もう流れは完全にこちらに来ている。一気に勝負を決めよう」
アレン様は私の頭をゆっくりとなでてくれる。
この人と一緒ならどこまでも行けるような気がしてくるわ。
「アレン様と一緒ならどこまでもいけますね」
私がそう言うとアレン様も笑う。
この瞬間に私は幸せを強く自覚する。
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