第47話 選挙へ

 私たちは選挙の準備をはじめる。

 事前予想ではエル=コルテス地方議会議長と私が競っているわ。


 私の支持層は改革を望んでいる中産階級や豊かな農家のひとが中心になっているわ。


 中産階級というのは一代で富を築いた新興商人や学力で成り上がった役人、学者さんが多いわね。彼らは遅れて力をつけたせいで特権階級たちのことを苦々しく思っているのよ。だから、私たちの目指す改革に賛同してくれる。


 本当の意味での支持層である庶民の人たちは、残念ながら納税額を満たさないため参政権がないの。


 だから、私の本当の意味での支持層は選挙に参加できないわ。国民全員が政治に参加するために私たちは改革しようとしているのに……


 とてももどかしい。


 それに対してエル=コルテス陣営は主に特権階級を支持母体にしているの。

 つまり、特権をそのまま維持したい昔からの名家ね。


 貴族や聖職者、古い大商人ね。すでに特権がある人たちはそのまま特権を維持したい。だからこそ、変革を嫌う。当たり前よね。そして、このまま制度を維持できるなら一生涯、特権を使ってぜいたくな生活ができるのだから。


 だけど、その特権階級が徐々に横暴になっているのよ。

 不当に税金を重くしたり、非特権階級を差別するようになったりね。


 そして、彼らが富を独占するために知識まで独占しようとした結果、今の国全体の閉塞的な状況を作り出している。


 ただ、富裕層が後ろにいるので資金面でも豊か。

 敵ながらうらやましいくらいの力を持っているわ。


 今のところ支持率では……


 エル=コルテス:42パーセント

 ルーナ=グレイシア:39パーセント


 正直に言うと自分でも驚くほど接戦になっていると思う。

 だって、持っているものや知名度が違い過ぎる。彼はずっと政治や経済の分野で影響力を持っていた人間。私は"森の聖女"なんて言われてうわさにはなっていたけど、正体はずっと秘密にしていたわ。


 そんな得体の知れない女に期待してくれている人たちがこんなにいるということは、みんなこの閉塞感を解決したいんだと思う。


 このまま本格的な選挙活動になれば私たちの考え方はもっと多くの人たちに伝わるわ。そうすれば逆転のチャンスは私たちのもとに転がってくるはず。


 あとはあきらめずに地道な作戦で支持を拡大するわ。

 大きなブームを作り出せば奇跡は起きる。


 それが私たちの夢の第一歩だから。


 一番の問題は……


「エル=コルテス陣営がどんな妨害はしてくるかね。たぶん、この結果を見て向こうはなりふり構わず戦ってくるわ」


 私は覚悟を固めて新しい一歩を踏み出す。

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