第46話 暗躍を始める対抗馬
―敵陣営―
俺は新聞を読む。そこでは知事が今期限りで政治家を引退するという記事が大々的に取り上げられている。
少し脅されただけで簡単に折れてしまうやわな政治家だな。いつもはあんなに偉そうなのに俺に脅迫されただけで泣いて許しを請う愚かな男。
俺の
「後継候補としては、エル=コルテス・バルセロク地方議会議長を指名させていただきます。彼は家柄・能力すべてにおいてふさわしい方ですから」と知事は俺を後継指名している。
これで大義名分まで獲得した。
フリオ元文部大臣が出馬を検討しているという情報があった時は、少し焦ったが奴が出版を計画していた『クロニカル叙事詩』の出版許可を交渉カードに出馬を取り下げさせた。
あの本の出版くらいで出馬を取り下げるとは愚かな野郎だな。別の者を出馬させるつもりらしいが、あいつ以外なら俺の対抗馬には成り得ない。つまり捨て駒にしかすぎないだろうな。
フリオは自由党という新政党を作り政界再編を目指すらしい。相変わらずの理想主義者だ。反吐が出るぜ。
この国は保守党という絶大な力を持つ与党だけで十分なんだ。野党はあくまで国民いや、国民と言うのは貴族や金持ちだけだな。貧乏な平民という非国民のガス抜きでしかない。
存在するだけで価値がある。だが、力などは与えてはいけない存在だ。
永遠に夢を見続けていればいい。
その夢を見るだけで、あとは雑巾のように特権階級に搾取されていればいい。
あいつらはそれが幸せなのだからな。
「エル議長! 大変です。フリオ元大臣の代わりの自由党の候補者が判明しました!!」
秘書は大慌てで俺に迫る。
「誰だ?」
「ある意味で、大物です。ルーナ元・伯爵令嬢です。クルム第一王子の元婚約者で……今はルーナ=グレイシアと名乗っていますが、彼女が最近うわさになっていた"森の聖女"の正体です」
「ほう?」
これはおもしろくなったな。なるほど、元婚約者が出てきたか。生きていたんだなぁ、あの女。
だが、もう殿下の婚約者の地位はうちのカワイイ姪がかっさらっている。
つまり、ルーナは終わった女だ。もうあいつの時代はやってこない。
時計の針は元に戻らないからな。
森の聖女と呼ばれて人気はあるらしいが、まぁいい。
俺が正しい金の使い方ってやつを教えてやろう。
メディアと金、権力を持つ男を敵に回したらどうなるか教えてやろう。
ネガティブキャンペーンの始まりだ!
――――
(作者)
いつも読んでいただきありがとうございます。明日は更新お休みです!
次回は金曜日です。
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