第43話 怒りの王子
―王宮・クルム王子の部屋―
「アレンが俺を裏切ってルーナの側に立つとはな……まさか、あの女がここまで政治家だとは思わなかった」
俺は怒りに狂っていた。
アレンは俺が10歳の時から仕えていた
あいつだけはどんな時でも俺の近くにいてくれると思っていたんだ。甘えていたともいえる。あいつには全幅の信頼をおいていた。だから、どんなことでもあいつに相談していたし難しい仕事も任せ続けていた。
ルーナの暗殺を指示したのもあいつにしか任せることができなかったからで、俺は事実確認もあえてしなかった。それをしてしまえばあいつを信用していないようになるからだ。
なのに……
最も重要なタイミングで側近に裏切られて俺の計画も狂ってしまった。
「くそっ! 叔父上にまで弱みを握られてしまうとな……」
俺はワインを瓶から直接口に流し込む。酔わなければやってられないんだよ!
これで俺と叔父上の権力闘争にまで悪い影響がでてしまう。
宰相代理という役職もやばいな。
左遷は間違いない。情報局を抑えて、軍の上層部ともコネクションを作れているのに肝心の役職で左遷なんて屈辱だ。
これもすべてルーナとアレンが悪い。
俺は叔父上から3つの役職を提案されている。
保守党院内幹事。
ヴォルフスブルク帝国駐留副大使。
軍務省副大臣。
一応、昇進的な扱いだがどれも絶妙に中央からは遠いポジションを提示されている。
つまり、昇進に見せかけた左遷だよ。
政局に関与できる宰相代理のほうがはるかに大きな力を使うことができるんだ。
政敵である俺を昇進に見せかけて中央から遠ざける。さらに、俺の異母弟が新しい宰相代理になるというのも気に食わない。
このままでは体のいい
院内幹事は、議会の雑務に追われる。政策立案への関与はかなり限定されてしまい党内の事務屋的な存在になる。中央で大きな権力を持つことは難しい。
副大使は大使館内では強く動けるが、中央からの距離が離れすぎている。ヴォルフスブルク帝国は大陸内の覇権国家だから重要で輝かしい経歴にはなるが……
その間に国家中枢は弟たちに乗っ取られているだろうな。
俺がイブール王国に戻ってくることはないだろう。大使職を永遠とあてがわれて死ぬまで外国生活だ。
軍務省は権限は強い。だが、大臣は現役の軍人しかなることができない。要は副大臣なんて軍人の使い走りにすぎないんだ。
つまり、どれを選んでも屈辱的ってことだよ。
この野郎!!!!
いいぜ、これくらいのハンデがあるほうが面白い。
俺は絶対に宰相になってやる。そして、国王になってあいつらに復讐してやる。
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