第13話

 顔が引きつっているのがわかる。明らかに場違いなのだ。

 僕の隣には黄色いユニフォームを着た先輩が。陸上部だ。その隣は白いユニフォーム、野球部。柔道着や剣道着の人もいる。そんな中僕はいたって普通の体操着、何の個性もなかった。

 部活対抗リレー。まさかこれに自分が出ることになるとは思わなかった。何せ、僕は足が遅い。去年も、登山部チームの補欠候補にもならなかった。しかし、フィールドワーク部は部員が四人しかいないため、強制的に全員参加になってしまったのだ。

「せっかくだから、いつもの順番で行きましょう」

 と、南宮さんは言った。つまり、僕は第一走者である。

「それでは、位置について」

 よーい、パァン。僕は一歩目から出遅れた。幸いにも剣道部が重装備の上に竹刀をバトンとして持っているおかげで、ほぼ並走することができた。陸上部とサッカー部がぐんぐんと遠ざかっていく。

 なんとか100メートルを走り切り、ほぼ最下位で荒津君にバトンを渡した。大きく肩で息をしながら、レースを見守る。荒津君は普通の速さだったが、運動部の中ではやはり遅い。フィールドワーク部は単独の最下位になった。

 バトンは久佐木君へ。彼は見た目通りに足が遅かった。ただ、剣道部のハンデも大きく、ぶっちぎりの最下位とはなっていない。またそのすぐ前にも柔道部、弓道部がいた。

 アンカーは南宮さん。バトンを受け、三歩進んだところでびっくりした。ぐん、と加速して、一気に剣道部との差を詰め、抜き去った。鹿が飛び跳ねるように、軽やかに駆けていく南宮さん。柔道部を抜き、弓道部にも追いついた。その前方には登山部の津久田さんがいたが、さすがに距離がある。それでも南宮さんは弓道部をかわし、津久田さんを追った。差は縮まっていくものの、距離が足りない。津久田さんが、先にゴールした。

 僕らは足元がふらつきながらも、南宮さんのところに駆け寄った。

「先輩すごいっす!」

「いやあ、登山部に勝ちたかったね!」

 津久田さんがこちらを見ていた。南宮さんと僕を、交互に見ているように感じた。


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