第13話可愛らしい彼女にも恐ろしい一面が
昼前になり、心咲頼が昼食を作ってくれるとのことで階下のリビングへと向かった。
昼食は手軽なメニューでフライパンからパチパチっと油が跳ねている音がリビングに響く。
それにつられたようで彼女の弟が扉からひょこっと顔だけ覗かせ、様子を窺っていた。
俺と視線が合うと扉に隠れて、恐る恐る顔を覗かせ、キッチンで昼食の取りかかる心咲頼へと視線を向けていた。
「そんなところに隠れてないで、入ってきなよ。もう少しで出来るからね」
弟に気付いた彼女がそんな風に声を掛けたが「今はいらないっ!後で食べるからっ」と言い残し、階段を駆け上がっていく弟。
「嫌われてるよね、弟さんに......」
「嫌われてるというか、人見知りで......あまり他人に懐かないって感じだから。屋那瀬くんが気にする必要はないから」
「心咲頼さんの家族にあんな風に接されると歓迎されてないようで、落ち着かないっていうか......」
「ふふっ。落ち着かないって、私といるといつも落ち着いてるって感じがしないけど。屋那瀬くん」
「仕方ないじゃっ......仕方ないでしょ、年頃だし......女子の部屋で二人だけっていうことも初めての経験で......」
俯きながら、恥ずかしい事を口にしてしまった。
「えっそうなの?小学生辺りって親しくしてた子のとこへ遊びに行ったりしなかったの?屋那瀬くんって」
「遊ぶような親しい女子がそもそもいなくて......ってぇ、やめてやめてっ!恥ずかしい......からっ。心咲頼さんにそんな声で聞かれるとつい喋っちゃうから、もうっ......やめてください。お願いだから、心咲頼さぁんっ」
情けない声をあげて、降参した俺。
そんな俺に不満そうに膨れっ面をみせてきた。
「ぶぅ~っ!恥ずかしがることないじゃんっ!いずれ付き合うことは決まってるんだしっ、別に聞かせてくれたって良いじゃん!付き合ったら聞かせてくれるっ?屋那瀬くんっ!」
「決定事項......なの?付き合うって」
「目を醒まさせてほしいのぅ~っ?屋那瀬くぅーん」
「ちっちちぃっっ、がぁいますよぅっっ!付き合いますよね、冗談ですってっ!心咲頼さんっとぉうぅーっ付き合うことは決まってますぅっ!間違ってません、心咲頼さんはっっ!」
眉を一瞬ピクつかせ、握り拳をつくりだしたのを捉え、慌てて否定した俺だった。
「そうだよねぇ~屋那瀬くぅ~んっ!他の娘にのりかえるかと心配したよ~屋那瀬くんがそんな酷いことするなんてないよね。良かったぁ~!」
「うっ......うん」
彼女の恐ろしい一面を垣間見た気が......する。
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