第5話友達に嫉妬する彼女

翌日。

登校して、下駄箱でスリッパに履き替え、廊下を歩いていた。

「おーい、結翔ぉ待てよ」

後ろから俺の名前が聞こえ、足をとめる。

「おはよー、結翔って匂う。お前のクラスにいるギャルでお馴染みの心咲頼さんの匂いがするっ!」

河田こうだ君の鼻って犬と同じなの?」

隣に並んだのを見て、歩きだす。

「いんや、それほどでもない。あれあれぇ~否定しないんだ。結翔ぉはぁ」

「......にやけ面やめて、気持ち悪い。俺に触れると思うか、心咲頼さんが?」

「わかんねぇじゃん。ジコで触れたりするかも、少し触れたというよりめっちゃ匂うけど」

「いやいや、それこそジコで転けそうになったときになったとかあるだろ」

「う~ん。あっやあしいなぁ~結翔、隠してることあるでしょ。親友にさぁ」

「親友......じゃねぇって。ないよ、隠してることなんて」

「またまた、思ってもないことを。照れんなよ、しっゆーよ」

「煩いって。肩に手を置くなって、暑いんだよ」

「なんだよ、つれねぇなぁ」

教室の前に到着して、彼は教室に足を踏み入れ、別れる。

俺は、自分の教室まで歩く。

しつこいし、なんで心咲頼の匂いが分かるんだよ。

すごいな、あいつ。

今日は朝練だったのか。

教室の前で、心咲頼が壁に寄りかかっていた。

ウェーブしている毛先を弄りながら。

「おはよう、心咲頼さん。教室で待ってたらよかったのに」

「おはよう。屋那瀬くん、遅いよ」

「ごめん、友達に絡まれて。遅くなったんだよ」

教室には、誰一人いなかった。

「友達?」

教卓に手をついて聞いてきた彼女。

俺は、近くの椅子に腰をおろし、こたえる。

「去年、同じクラスになった男子なんだけど。心咲頼さんの匂いがするとか言い出して、驚いたよ」

「匂わないけど。そんなに臭いするかな、私の?名前はなんていうの?」

彼女が制服のにおいを嗅ぐため顔を近付けてきた。

近いって、心咲頼さん!

「気にしないでよ。いい匂いだから、心咲頼さんは。河田君なんだけど」

「なんて書くの?」

「運河の河に田畑の田だよ。興味津々だけど、気に触ることでも?」

「違うけど。私より友達が大事なのかと──」

声のトーンが低くなる。

「気を悪くさせたのなら、ごめん。心咲頼さん」

「あのゲームしよ、屋那瀬くん」

スマホを見せて、誘う彼女。

「わかったよ」


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