第2話二人だけの空間

昼休み。

俺は、教室を抜け、一階までおりて校舎と体育館を繋ぐ渡り廊下を目指す。

渡り廊下の階段に腰をおろし、弁当箱の蓋を開けて、昼食を摂り始める。

10分ほどたった頃に頬にひんやりとした感覚がして、声をあげる。

「今の可愛かった。待たせて、ごめん。屋那瀬くん」

隣に女子が座り、ペットボトルのサイダーを渡そうとしている。

「サイダー。炭酸無理なんだよ、俺。ごめん、心咲頼さん」

「そうなんだ。無難にお茶がよかった、屋那瀬くん?」

「心咲頼さんが買ってくることなんてないよ。三和さん達のとこから抜けてきたの?」

「うん。屋那瀬くんと喋りたいから。美味しそうだね、屋那瀬くんの弁当。卵焼きちょうだい、あーん」

口を開けて、食べさせてもらおうとしている。

「う~ん、ういひぃ~。屋那瀬くん、ご機嫌斜め?」

「そんなことないけど。今日はないの、あれ?ほしい気分なんだ」

「あるよ、手を出して」

ブラウスの胸ポケットからケースを取り出し、一粒のタブレットを掌にのせてくれる。

俺は、彼女からもらったタブレットを口に放り込む。

いちご味のミンティア。冬にしか、見掛けない。近くのコンビニやスーパーでも毎年見掛けるとは限らないので、見掛けると必ず買うものだ。

「みんな酷いよね、陰口や悪口ばっかり。屋那瀬くんの」

太ももに肘を置いて頬杖をつきながら、嘆く。

「そんなもんでしょ。心咲頼さんも以前同じようにしてたような」

「ごめんなさい」

「謝らなくていいよ、気にしてないから」

「えっと......屋那瀬くん、これあげる」

彼女が持っていたのは、クッキーが入った透明な袋。

「ありがとう、心咲頼さん。美味しいよ、いつもありがとう」

袋から一枚のクッキーを取り出し、一口かじり、感想を伝える。

「よかったぁ。喜んでもらえて嬉しい」

彼女は、心の底からの喜びを表現した笑顔を見せる。


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