第3話
今、部屋にはあるものが運び込まれている。
台座と水晶。
水晶は俺の腰上くらいの位置にあった。
この水晶に手で順番に触れてほしい。
俺たちはそう指示された。
この世界での能力を計測するそうだ。
計測は出席番号順に行われていった。
何人かの作業がつつがなく進んでいき出席番号12番のちーちゃんまでやってきた。
ちーちゃんが水晶に手で触れた。
水晶が青色に光る。
おぉ、と声が上がった。
サマルが微笑み、手を合わせる。
「素質があります」
水晶の周りにはサマルの他に数人の神主服の男が立っている。
彼らは何かを見極めんと目を光らせている。
高瀬梨奈の番がきた。
発光色は黄色。
色で何か違うのだろうか?
「おぉ!? こ、この光量はっ!?」
神主男たちがどよめく。
これまでで最も強い光量。
「これは素晴らしいです」
サマルもご満悦。
「すごい結果なんだね!さすが梨奈!」
高瀬梨奈の取り巻きたちはすかさず高瀬のご機嫌をとる。
「異世界も悪くないかも!」
喜ぶ高瀬。
調子のいい女である。
とはいえ仕方がない。
自分が他より優れている。
誰だってそれは嬉しいだろう。
しかし高瀬の天下は三日どころか、5分も続かなかった。
陽葵が水晶に触れる。
「おぉぉおおおお!? ば、馬鹿なぁぁああああ!? こんな、こんなことがぁっ……ぐわーっ!?」
迸る金色こんじきの光。
神主男たちが身を引く。
ピキッ
水晶にヒビが走った。
驚愕する神主男たちの視線を一身に集めていた水晶が、
パリィンッ!
砕け散った。
「水晶が……く、砕け散るなんてっ!」
冷や汗を垂らす神主男。
陽葵がサラッと聞く。
「私なに起きたのかわかってないんだけど? 今のって、なんかすごかったのかな?」
満面の笑みのサマル。
「素晴らしいです森(陽葵)さん! あなたは最高ランクのS級勇者です!」
最高ランクのS級。
なんかすごそうだ。
陽葵が頭を掻く。
「なんかすごいなら良かった」
陽葵の周りの男たちが目を光らせている。
「陽葵、やっぱりすいな」
「森さんは別の世界でもすごいんだねー」
えへへと小さく笑う陽葵。
サマルの指示ですぐさま代わりの水晶が運び込まれた。
飛び散った破片を神主男たちが掃除する中、測定が進む。
「な、なんだとーっ!? これは――」
次に驚愕の波を生んだのは、佐野颯汰。
銀光。
水晶が発した光が明滅している。
直後、
ボロッ、
ブワッ
なんと、水晶が粉レベルにまで分解された。
粉塵が周囲に舞う。
「げほっ、ごほっ!」
咳き込む神主男。
「こんな色初めて見ましたよ佐野様」
煙たい空気を手で払いながら言うサマル。
表情は大変なご満悦。
「二人もSランクがいるとは……今回の勇者たちは、格別に素晴らしいです」
陽葵も颯汰と同等の期待値か。
さすがはクラスの二大主人公。
三度みたび、水晶が運び込まれる。
測定再開。
「さあでは、次の方!」
しかしその後は凡々とした結果が続いた。
比例してサマルのコメントも薄くなっていく。
最高でもBランクがせいぜいだった。
ちなみにちーちゃんと高瀬はAランク勇者だったらしい。
そんな中、ついにやって来た。
俺――柊俊介の番が。
異世界で魔王を倒して帰ってきたら、現実世界で魔王と恐れられていた 小野音 @cccp123
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