第36話 タイマン

<タイマン>


ベインとライは接戦だった。


ベインは短剣で素早い突きをすると、それを躱し、

ライはカウンターで切りかかる。


しかし、それにまたカウンターで合わせてくるベイン。

二人ともほぼ互角の戦いで勝敗はつきそうもない。


「なぁ、ベインと言ったか。こんなに強いなら軍に入ることも出来たな」


ライがそう言うと、ベインは薄ら笑いを浮かべ楽しそうにこう言った。


「ええ、私もそう思います。

しかし、オッドテクノロジー社にいるほうが沢山のことを成し遂げられます。

個人の強さを追求するよりもはるかに楽しいのです」


ベインはそう言うと、さらに鋭い突きで応戦した。


「そうかい。お前たちがしていることは理解出来ないがな!」

そう言うとライはもう一つ剣を出し二刀流での戦いに変更した。


「二刀流……面白いですね。

しかし、そろそろ剣術という古典的な戦いにも飽きてきました」


そう言うとベインは何も無い空間に何やら絵を描き始めた。


そうすると、空間を破り目の前に大砲が現れ、

ライに向かって紫色のレーザーが放たれた。


「何だそれ! そんなのありかよ!」


ライはレーザー攻撃を避けながら二刀流の先から波動を繰り出し応戦した。


「ほう。剣先から自らの力で波動が出せるのですね。

あなた、さては親衛隊ですね」


ベインはその戦い方からライが何者かを悟った。


「お前には関係の無い事だ!」


そう言うとライは続けざまに波動を繰り出した。

大砲は破壊されたが、

ベインはまた新たな大砲を素早く描き出しレーザーを繰り出した。


「あなたでは私は倒せません。親衛隊の方、もうここらでやめにしましょう。

そして、今仲間になることを決めるのであれば

オッドテクノロジー社のSPとして雇いましょう。

親衛隊は全国民の中からたった五名しかなれない選ばれし者。

貴重な戦力です。

ここで私の手によって死ぬのは大変惜しい。

オッド様にも私から推薦しますよ」


「うるせー! お前たちの仲間になるくらいなら死んだほうがマシだ!」


そう言うとライは波動での攻撃を続けた。


ライにはプライドがあった。

彼は類い稀なる才能を持ち、

十歳で親衛隊入隊という偉業を成し遂げた。

親衛隊創設以来、この最年少記録を抜かれたことは無い。


ライは戦いながら、ベインのスピード、戦闘能力を把握していった。

ベインの速度はライより少し早く攻撃を当てることが出来ない。

レーザーも邪魔をしてくる。そうなれば、打ち手は限られている。


「一か八かこれでいくか……」


その時だった。


グサ………


「油断は禁物ですよ。親衛隊の方」


ベインはライの真後ろに立ち、剣で腕と脇腹あたりを刺していた。


「ちくしょう……なんてな。ベインさんよ、ハマったな」


「……?」


ベインは驚いた顔をしているとライはすぐさまベインの手を掴み、

心臓部を波動で打ち抜いた。


「クソ………」


ベインはそう言うと、その場に倒れた。


「ベイン、お前の速度には俺は叶わない。

だから攻撃を受ける代わりにお前を捕まえることにした。一か八かだったけどよ」


「中々やるじゃないですか。しかし、私一人では死にませんよ……」


そう言うとベインは最後の力を振り絞って

空間にスイッチを描きキースが作り上げた地下道空間を末梢するクリスタルレッドのスイッチを押した。


地下道空間はみるみる歪み、どんどん萎んでいく。


「お前、何をした!」


「親衛隊の方、この空間は間もなく消去されます。

そして、私もアナタもこの空間に押しつぶされてThe endです」


「てめぇ……イカレてやがる!」


「何とでも言って下さい。またあの世で再会しましょう。親衛隊の方」


そう言うと、

空間の両サイドは折り紙の端と端とを合わせるように折り畳まれ、

押しつぶされた。


最後は小さな丸い一点に空間が圧縮され一瞬光った後に消えた。

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