第30話 指令
<指令>
金色の塔のシステムダウンをされた後、
オッドは冷静さを装っているが内心怒りが収まらない状態だった。
「ノウェル、今どの辺りだ」
「オッド様、間もなくエリア十四に到着致します。
AI警察は全てダウンしておりますヨォ」
——キース……お前というやつは……
自分で作っておいていうのも何だが、素晴らしい作品だよ。
しかし、私が思い描く世界にオマエはいらない——
「ノウェル、エリア十四は任せたぞ。
最後のスクリーニングを実施し、
真の悪性遺伝子が炙り出され次第、
該当者は正確に肉体を消去せよ。
それ以外は優秀な民であり、
これからの国の発展に必要な連中だ。
大切に保管せよ。
最後のスクリーニングが終われば優秀な民には意識を戻し
私が作り上げる新しい世界の住人として迎え入れるのだ」
「オッド様、承知しております。お任せ下さい」
「ノウェル、頼んだぞ」
「承知致しました」
ノウェルがそう言うのを聞くと、オッドは少し微笑み、通信を切った。
「ベイン、それでは最後のスクリーニングを開始する。
準備は良いか?
何より選別にミスはあってはならないぞ」
「はい。精度を上げる為にかなり時間が掛かりましたが、
やっと準備が整いました。
それでは、最後のスクリーニングを開始します」
そう言うと、ベインは目の前の何も無い空間に指でひし形を描いた。
そうするとそこにディスプレイが表示され、
画面の中のクリスタルレッドのボタンを押した。
「開始いたしました。
予定通り今から四十八時間で最終スクリーニングは完了します。
良性遺伝子であるならば予定通りエリア十四の肉体に意識を戻します。
悪性遺伝子である者は肉体、意識を全て消去致します。
良性遺伝子の民の知人が悪性遺伝子で消去される場合、
消えたことによるショックを強く受ける可能性がある為、
良性遺伝子の民から悪性遺伝子の知人との記憶を消去します。
それにより知人が消えてしまったという混乱は起こらなくなります。
オッド様、間もなくオッド様の世界が、理想郷エデンが完成致します。
おめでとうございます」
「ベイン、あとは必ずここにキースが来るだろう。
キースを消してこそ確実に新世界がやってくる。
最新の兵器で迎え撃とう」
「承知致しました」
そういうと、ベインは他の幹部を引き連れ、会議室を後にした。
その後、オッドは独り社内の窓から外を眺めこれまでの記憶を巡らせた。
両親との思い出、シェリーとの思い出、キースを作った日のこと、
キースと共に遊んだり、システムを開発した日々のこと。
遠い昔のことも今起きているかのように思い起こされた。
しかし、彼の考えが変わる事は無かった。
自分がこれから行うことについての覚悟を胸の中に持っていた。
その覚悟を今一度確かめると、
オッドは遠い空の向こうにいるであろうキースに向かってこう言った。
「キース、お前の覚悟を見せてみろ」
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