第22話 同志

<同志>


キースはもう一度、ガラクタを集め飛行船を作っていた。

その姿を見ていたサラはキースの才能に驚きを隠せなかった。


「キース、あなた何者なの? 

いくら何でもガラクタからこんなものを作り出せるなんて理解出来ないわ……」


ジェイド、ライ、ロックも目を丸くして作業を見守っている。


「サラ様、こんなことは慣れですよ、慣れ! 

習慣です」


キースは自分がAIロボであることが悟られないように

あくまで努力で作れるようになったことを強調した。


「私は何度やっても作れるようになる気がしないわ。

それより、サラ様っていうのも、敬語もこの際止めましょうよ。

これから一緒に戦う者同士。

仲間としてサラと呼んで」


そうすると、横からジェイドが口を挟んだ。


「サラ様、それはいけません。

私たちに対してはともかく、あなたはこの国の姫なのですよ」


「ジェイド、私たちはキースがいなければこの先戦うことが出来ないわ。

そして、何よりもお姫様をやっている状況ではないの」


ジェイドは何かを話そうとしたが、サラの勢いに押され黙り込んだ。


「サラ様、あっ、サラ……飛行船がもうすぐ出来ます……もうすぐできるよ!」

ジェイドの表情も少し気にしながら照れた表情でキースが言うと

サラは笑顔でこう言った。

「うん、その方がいい! ありがとう、キース」

サラは満面の笑みで応えた。


少しの時間が経過し、

飛行船を作り上げたキースは作戦会議を開いた。


「これから作戦を伝えていこうと思う」


キースは位置を把握する為、

デジタルマップを広げると細かく作戦を話し始めた。


「先ず、予定通り王都から北へ向かい、

AI警察を避けながら金の塔へ入る。

そして、AI警察、オッドテクノロジー社のセキュリティシステムを

一部ダウンさせる。

そうする事でオッドテクノロジー社の内部に侵入する事ができる。

システムをダウンさせた後は、

チームを二つに分ける。


一つのチームはエリア十四にて全ての国民の肉体を救出する役割。


意識を取り戻せたとしても敵に国民の肉体を掴まれている以上、

何をされるか予想出来ないからね。

一度はスコア化にて危険遺伝子と認識された民の肉体だから、

最悪のケース全部消される可能性だってある。


もう一つのチームはオッドテクノロジー社に向かい、

格納器の中の意識を肉体に戻す役割。


AI警察を止めたとしても

エリア十四にもオッドテクノロジー社にも敵は存在する。

その為、ガラクタから作ったものだけど……ここに武器がある。

ぜひ活用して欲しい。

AIを搭載しているから二倍近くの確率で敵に攻撃が当たりやすくなる」


そこには地球で言うところの銃、

ライフル、槍、剣に似たデザインの武器が置かれていた。

簡単に言うと、通常の武器に比べるとAIの自動調整機能がある為、

二倍近く攻撃が当たりやすい仕様だ。


「攻撃が当たりやすくなるのは有難い。是非活用するよ。それと、AI警察の対策は他に考えているかい? 何よりも数が多い」

親衛隊のライが口を開いた。


「それには僕に考えがあって、このアイテムを使用する」


そう言うと、キースが手に何やら青い水晶を持っている。


「……ん? 何だ? それは?」

中将のロックは不思議そうに呟いた。


「これは、AI警察の動きを一時的に止めるアイテムだ。

全部で四つある。

もちろん、金の塔のシステムをダウンさせないと

根本的な解決にはならないけれど、

AI警察は配置されているだろうから一時的にでも止めなければならない」


それを聞いてジェイドはキースに一つ確認した。


「その青い球で、一時的に止めて金の塔に入り込んだとしてシステムは確実に止めることは出来るのかい?」


「大丈夫! あのシステムの土台を作ったのは僕だから。

絶対に止めることが出来る」


「君は優秀だな。任せたぞ」

ジェイドは安心した面持ちでそう伝えた。


「でも、どのように攻め込むの? 

正面突破ということにはならないよね?

 さすがに……」

ヒョウは心配そうにキースに尋ねた。


「それは、万が一に備えて、塔を全員で囲むようにして僕たちの配置を分散させる。僕が塔の真正面、塔の真後ろがジェイド、

塔の正面から右がロック、塔の正面から左側はライ。

サラとヒョウはジェイドの後方で待機していて欲しい。」


それを聞くとサラは口を挟んだ。

「私はキース、あなたと行くわ! 私はこう見えても戦える! 大丈夫!」

そうすると、すかさずヒョウも体を乗り出して言った。

「僕だって戦える! 大丈夫だよ!」

それを聞くと、キースは真剣なまなざしで答えた。


「分かってる。しかし、これは戦争だ。少しでも確率を上げる必要がある。気持ちだけは嬉しいけれど……」


「でも……うん……分かったわ、キース。あなたに、あなたに従うわ」

反論したそうなサラだったが少し考えてから答えた。


「ありがとう、サラ。それではさっそく向かうとしよう!」

キースがそう言うと、飛行船に乗り込み、飛行船に意識転送した。


そして、ヒョウ、サラ、ジェイド、ライ、ロックも乗り込んだ。

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