第20話 仲間

<仲間>


「誰かいるのか?」


その声の方向を見ると三人の男と、一人の女がいた。

全員、ケガをしており血を流している。


「あなた達は…? それよりそのケガ大丈夫ですか?」


キースがそう答えるとその中の一人が答えた。


「少しケガはあるが、全員致命傷では無い。

それより、君たちは傷一つ無いな。


……その残骸から見るとそこは王宮の牢屋。


なるほど、とくに頑丈に作られている恩恵か。

しかし、この牢屋にいるということは君たちは罪人ということになるが」


「いいえ、我々は何も罪を犯してはいません」


「そんな訳は無いだろう。牢屋にいて罪人ではないとは信じられない」


「僕たちは王都付近を飛行していたんです。

そしたら急にオール軍に追跡されて攻撃されたんです。

戦争状態でもないのに王の軍を動かすなんて」


それを聞くと、その男は申し訳無さそうにキースに謝罪した。


「それは、申し訳ないことをした。

警備強化をする理由があったのだ。謝って済む問題ではないが」


「そうですよ! 死にかけたんですよ!」

隣にいたヒョウは声を荒げて訴えた。


「それにしても、さっきの爆発音は何ですか。

また、そこに倒れている兵隊の方々も……

ここで何があったんですか」


キースは状況を整理する為にその男に尋ねた。


「先ず、王の軍が出陣していたのには訳があった。

それは、王の命を狙われている可能性があった為だ。

その為、軍を出陣させていた。

そこで君たちが王都周辺を飛行していた為、

警戒していた軍は君たちを攻撃したということになる。

そして、今何があったかは、直接君たちの目で見たほうが早い。

こちらへ来てくれ」


キースとヒョウは粉々になった階段を何とか上ると

そこには信じられない光景が現れた。


「何だよ……これ……」

キースとヒョウは同時に言葉を放つとしばらく放心状態となった。


目の前に移る景色は、

完全に焼け野原だった。


全ての建物が崩壊し、焼き尽くされていた。

あたりはガソリンのような匂いが立ち込めており、

白い煙も所々漂っていた。


瓦礫の下からは、身体から引きちぎられた焦げ付いた手首が

まるで天に助けを求めるように微かに見えた。


「我々は攻撃を受けたんだ。軍を配置していたが何も出来なかった。

一瞬の出来事だった」


キースはその男を見ながら疑問に思っていたことを二つ聞いた。


「王はご無事で……? そして誰がこんな攻撃を……」


「王は殺害された……守り切れなかった。

王の間は高セキュリティであったがそのセキュリティを難なくクリアした。

それをいとも簡単に実行したのは……オッドテクノロジー社だ」


「え……」


キースは、それ以上言葉にすることはできなかった。

兄がやろうとしていることの中に王都殲滅まであったとは

キースの想像の域を超えていた。

そして男は続けた。


「私の名はジェイド、隣の男は親衛隊のライと中将のロック。そして、隣の女性は、

この国の姫であるサラ様だ」


ジェイドは逞しい筋肉で胸板も厚くがっちりした体形だ。

髭が濃くとても男らしい。


ライは細身、高身長で百九十センチくらいはあるだろうか。

剣を背中にかけていて、髪はパンクロッカーのようにツンツンとしている。


ロックは銀髪でライフルを肩にかけている。

体系は細マッチョと呼ばれるものに近いだろう。


そして、この国の姫であるサラは金髪で目が青と赤のオッドアイ。

肌が白くとても美しい女性だ。


「初めまして。僕はキース、隣はヒョウです」

ヒョウもぎこちなくお辞儀をした。


「王は殺害されてしまったのですね。そして、王都はこのような状態に……」

キースは辺りを見渡しながらそう言うと、悲しそうな表情を浮かべた。


「ああ、そうだ。ちなみに、

君たちは王都を通過してどこに向かおうとしていたんだ?」


ジェイドは不思議そうにキースに聞いた。


「僕たちは塔に向かおうとしていました」


「何故? 君たちが塔に向かって何をしようと?」


「塔のシステムを破壊しようとしました」


「何だって? あそこを破壊したらどうなるか君は知っているのか? 

君たちは何者だ」


ジェイドは困惑した面持ちでキースに問いかけた。


「はい。知っています。

僕はオッドテクノロジー社が行おうとしている“あること”を阻止しようと考え

塔を破壊し、AI警察、そしてオッドテクノロジー社のセキュリティシステムを

ダウンさせるべく塔に向かっていました」


「オッドテクノロジー社が行おうとしていること……」


「はい」


そうすると、今まで口を開かなった姫が口を開いた。


「あなた、あの計画を知っているのね?」

サラの声はとても優しかった。


「はい、知っています。

そして、オッドテクノロジー社の社長であるオッドは私の兄です。

私は兄が実行しようとしていることを阻止しようと社を抜け出し、

塔に向かっているところでした。


兄は計画を知った私を殺害すべくAI警察を使い、

今も私を追っています。


ハッキングによって選別の計画を知ることは出来ましたが、

まさか王都を殲滅させるなんて……」


「あなたの兄がオッドなのですね。

王はここにいる親衛隊以上の限られた幹部にだけ、

この計画を話していました。

私はもともと選別の計画に反対し、

父に何度も進言していましたが全く聞き入れてはくれませんでした。

これがこの星の未来の為だと言って……」


「僕も兄と話し合いましたが、

兄を説得することが出来ませんでした。

そして、兄はその場で僕を殺そうとした。

その為に僕は社を逃げ出して何とか兄の計画を阻止しようと……」


「分かりました。今の状況が理解出来ました。

あなたの兄であるオッドを止める策はあるのですか?」


「あります」


「それを聞かせてもらえますか?」


キースは、サラに、自分はエンジニアであることや

ハッキングした際に抑えた情報である、

危険遺伝子と認識された民の肉体は金色の塔の西側にあるエリア十四に保管され、

意識データはオッド社のコントロール室の格納器に転送されていること、

格納器に保管されている意識に対して最後のスクリーニングを行ったあと

真の危険遺伝子と選別された民の肉体、意識は永遠に末梢されること。


何としても最後のスクリーニングまでに、塔のシステムダウンをし、

AI警察を止め、オッドテクノロジー社に入り込み、

コントロール室の格納器から意識を民の肉体に戻さなければならないことを伝えた。


全て聞き終えるとサラは落ち着いた声でこう言った。


「共に協力して戦いましょう。この星の未来の為に」

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