第17話 想
<想>
——僕は死んだのだろうか……。
自分の命はここで終わってしまったのだろうか……。
終わる時はこんなにもあっけなく終わるものなのだろうか——
僕は生まれてから、友達という存在や恋人という存在がいたことはない。
それがどんなもので、どんな感情を伴うものなのかもイマイチ僕には分からない。
もちろん、両親のぬくもりさえも、両親の愛というものも……。
兄さんがいたから自分には両親も友達も、
恋人もいなくても良いとずっと、ずっと思ってきた。
たくさんの新しい技術を生み出す事で、
忙しくすることではっきりとは分からない心の中の違和感を
ごまかしてきた部分もあると思う。
今となっては心のどこかで繋がりに憧れを抱いていたのは否定出来ない。
他人との深い繋がりを僕はどこかで求めていたんだと思う。
しかし、それを誰かに伝えることも出来なかった。
ただ想うしか無かった。
ただ、自分の胸の中にしまい込んで耐えるしか無かった。
答えが見つからないままただ走り続けるしか無かった。
僕は兄が作った『作品』でしかない。
AIロボでしか無い。
このような僕がこのような感情を持つことに何の意味があるというのか。
兄は僕にあらゆるサービスを作らせる為に、民同様に感情を埋め込んだ。
他のロボと異なる設計で僕を作った。
生まれながらあらゆるアイディアが浮かび、それを具現化出来た。
そのように僕はただ『設計』された。
本来、生命が生まれて来た意味というのは無いのかも知れない。
他のみんなは無いのかも知れない。
それが普通で自分自身で意味というものを生きながら少しずつ見つけていくものなのかも知れない。
でも僕は違う。
あらゆるサービスを生み出す為、
オッドの復讐の為に、
憎しみの中から生まれて来た。
オッドの戦いの為にだけ存在する兵器。
それ以上でもそれ以下でもない。
僕の生きる道には明確な答えがある。
それは民を選別し殺戮する為の技術を生み出すこと。
僕は民を幸せにするどころか
知らぬ間に沢山の民を苦しめる技術を生み出してしまった。
何も知らずに。
僕はただの馬鹿じゃないか。
何故気づけなかったんだろう。
何故、もっと早く。
悔しい。
こんな愚かな自分が。
こんな『物』でしかない僕が
今さら愛やぬくもりに憧れを抱く矛盾をどこに解き放てば良いのだろう。
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