第15話 飛行

<飛行>


「キース、金の塔が近づいてきたね」


目の前に広がる金の塔に胸を躍らせ、ヒョウはキースに話しかける。


キースは目を閉じて席に座っているが

意識は飛行船に繋がれているので

船内のスピーカーを通じてヒョウと会話をすることが出来る。


「そうだね、もう少しだ」


ヒョウがキースの言葉を聞くと同時に左側に目を向けると

今までに見たことの無い光景が広がった。


「何だ、この都は……」


ヒョウはまるで宝物を見つけたような驚きの表情で言った。


「王都だよ。王族や貴族の居住地だよ」


「テレビなどで少し見たことあったけど、こんなに凄いんだ……」


空から見ると大きな城や大きな家が見える。

社会の底辺で生きて来たヒョウには無縁の世界だ。


「この星には我々の国であるオールしか今は存在しないから、

あそこに住んでいる王様がこの星の王だ」


「まさにこの国の名と同じ、オール……オール王……」


ヒョウはとてつもなく大きな城を眺めながら呟いた。


ドーーーン!


急に大きな爆音と激しい揺れが起こり、

二人は一瞬何が起こったから分からなくなった。

ヒョウは直ぐに椅子の下に隠れるとキースに向かって叫んだ。


「キース! 何があったんだ! 故障か何かかい!?」


「いや、故障じゃない! これはオール軍からの攻撃だ」


「オール軍? AI警察のこと?」


「違う、王族を守る軍だよ。AI警察よりはるかに強力だ。

しかし、オール軍が動き出す時は戦争状態の時だけだ。

今この状況下で動き出すことはない」


「君の兄さんが王に話をして僕たちを追ってきているのでは?」


「それは無い。兄さんが我々を逃がしたという失態に対して、

そのリカバリーを王に依頼することは無い。

兄さんはあくまで自分の手で僕たちを捕まえに来る」


「そうか……それなら何故」


そう言っているともう一度ドーンという爆音が鳴り響いた。


「ヒョウ! 大丈夫かい? このままだと全て躱しきれない。

そのまま椅子の下に隠れているんだ!」


「わかった!」


後方から連打で攻撃を仕掛けてくるオール軍。


敵は三機だ。


キースが即席で作った宇宙船よりもはるかに高性能だ。


その時、前方に回ったオール軍の戦闘機に対してキースは大型熱線砲を放つ。


ドカーンという音ともにオール軍の一機が墜落し、

周囲には強いオイルの匂いが漂っている。


「よっしゃ!」


とキースが言ったと同時に残りの二機から立て続けに攻撃を受けた。


ドンドンドーン!


とてつもない爆発音が鳴り響く。


「キース、大丈夫!!!!?」


ヒョウは宇宙船が乱高下するのを感じ、

胃が上に上がる感覚に耐えながらキースに状況を確認した。


「マズイ……このままだと墜落する」


そうキースが言うとそのまま宇宙船は近くの林に墜落した。

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