第31話 おうちへかえろうよ


「まーくん、これはどういう・・・」

「あの人は、僕たちの親だよ」

「親?」

「といっても、人間の世界でいう、キャラクターや言葉の生みの親みたいな感じ」


ベクちゃんが、間違いなく真面目に答える。


「このショップは、人間の世界でいう移動動物園みたいなもの」

「移動動物園?」

まーくんは頷く。


「世界中を放浪して、あっちこっとを訪れてるんだ」

「で、この子たちは一体」

「聞いたと思うけど、生物だよ。ただ・・・」

「ただ?」

「人工的に作り出した生物なんだ」


人工的?


「驚くことはないよ。金魚とか豚とか、人間が人工的に生み出したのもいるだろ?」

「うん」

「あれの、少し大げさな感じかな」


まーくんは、たんたんと語る。


「で、君は何者なの?まーくん」

「僕は、この子たちの里親を探して回る、それが僕の仕事」

「話がわからないけど・・・」


疲れているのか、私の理解力が乏しいのか・・・


「僕は、人ではあるが、君たちとは種類が違う。歳の取り方が違うんだ。

成長速度が、遅い」

「じゃあ、地球人じゃないの?君は」

「地球人だよ。でも、どこかで枝分かれしたみたいだね」


まーくんは、ベクちゃんとモワちゃんの頭をなでる。


「この子たちには、幸せになってほしい。そのためには、しっかりとした里親を探したい」

「それなら、本来あるべき場所が幸せなんじゃ」

「それだと、この子たちがダメになってしまう。成長するのが幸せなんだ」


まーくんは、私を見つめる。


「ずっと探しているんだけど、ベクちゃんとモワちゃんの里親は、もう決まったね」


まーくんは、そういうと頭を下げる。


「咲代・・・いや飯塚さん、この子たちをお願いします」

そういうと、まーくんはベクちゃんとモワちゃんに言う。


「お前たちのうちは、ここではない。飯塚咲代さんのおうちだよ」


「お姉ちゃん・・・じゃあ、ぼくたち」

「ずっと居ていいの?」

私は2人を再度抱きしめる。


「当たり前じゃない。帰ろう。私たちのおうちに・・・」


いつしか陽は登り、あの店は無くなっていた。

まーくん・・・


また会えるかな・・・


新しい家族を迎え、新しい日常が始まる。


「おうちへかえろうよ」

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