第30話 ファンシーショップ再び

打ち上げから、帰ってきた。


「ベクちゃんと、モワちゃん、大人しくしてるかな。

埋め合わせはしないと・・・」


ただいまと言い、ドアを開けると、お母さんが、あわてた様子で駆け寄ってきた。


「咲代、大変」

「どうしたの?」

「ベクちゃんと、モワちゃんが、いなくなっちゃった」


私は、あまりの出来事に、動揺を隠せない。


「晩御飯は一緒に食べてたんだけど、その後突然・・・」

お母さんは、一枚に紙を見せる。


「これは?」

「あの子たちが、書置きしていったの。今、お父さんと実が探しているけど・・・」

実とは、お兄ちゃんの事だ。


私は、メモを見る。

そこには、こう書かれていた。


『おうちにかえります』


おうちって・・・


「とにかく、お母さんも探すから、あなたもすぐに来なさいよ」

「わかった」


私は、こうしてふたりを探すことにした。

鍵はかけ忘れたかもしれないが、気にしなかった。


「ベクちゃん、モワちゃん」


私は、ふたりの行きそうなところを探してみた。

公園、学校、カフェ・・・


だめだ・・・

思い当たらない・・・


おうち・・・

まさか・・・


そう思い、私はふたりと出会った場所へ向かう。

あのファンシーショップ。


速攻で、無くなっていたが、もしかしたら・・・


すると・・・


「あった・・・あのファンシーショップが・・・」


その中に、入ろうとするふたりを見つけた。


「ベクちゃん、モワちゃん」

私は慌てて駆け寄った。


「あっ、お姉ちゃん」

「たく、どうしたの?心配したんだから・・・」


私は、ふたりを怒鳴ってしまう。


「だって、お姉ちゃんは僕たちの事嫌いなんでしょ!」

「そうだ・・・嫌いなんだ・・・」


ベクちゃんとモワちゃんは、泣きながら抵抗している。


「嫌いだったら、探さないよ」

「でも・・・でも・・・」

「・・・・」

モワちゃんは、言葉にならない。


私は、無言でふたりを抱きしめた。


「もう、離さないから。あなたたちは、私にとって、私たちの家族の一員だよ」


「でも、僕たちのおうちは・・・」

ベクちゃんと、モワちゃんは、言葉にならないくらいに泣いている。


「あなたたちのおうちは、ここじゃない。もう、ここじゃあね・・・」


すると、店員さんが声をかけてきた。

あの時の店員さん。


「飯塚さん、・・・いや、咲代だったかな・・・」

「どうして、私の名前を知ってるんですか?」

私は、ふたりを抱えながら、驚きの表情をする。


「このなら、わかるよね」

店員さんは、鬘をして眼鏡をかけた。


「あっ、まーくん」

「久しぶりだね。て、そんな時間は経ってないか」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る