第28話 一日の終わり
緊張して、何を話したか覚えていない。
私は汗だくで引っ込んだ。
これで、うちのクラスはおしまい。
午前中に終わったのは、せめてもの救いだ。
「咲代、汗だくだね」
あかりと、こころが声をかけてくる。
「まあね」
「ベクちゃんと、モワちゃんも、汗だくだね」
「哺乳類だからね」
「哺乳類って、ぬいぐるみでしょ?生きてるわけじゃあるまいし」
こころのツッコミに、我に返る。
「冗談よ。冗談」
「だよね、この子たちが生きていたら、問題だって」
あかりが、笑いながら言うが・・・
生きているんです。
この子たち・・・
「お姉ちゃん」
「どうしたの?モワちゃん」
「客席見た?」
「見てないけど・・・どうして?」
「パパとママとお兄ちゃんがいたよ」
私は客席を見る。
確かにいた。
ていうか、密が厳禁なので、人数制限されている。
まあ、このご時世しかたがないが・・・
人数制限?
「ねえ、まーくん」
「どうしたの?」
実行委員でもある、マーくんに尋ねた。
「人数制限という事はもしかして・・・」
「午後もうちのクラスがやるよ。同じ事」
聞いてない。
「午後は、隣のクラスの演劇だったよね?」
「主役が入院して、辞退するから、代わりにやってくれって」
「いつ、決まったの?」
「広井さんの落語の時」
そうか・・・私がいなかった時だ。
「僕から言おうとしたけど、広井さんと君野さんが、伝えておくって」
してやられたか・・・
どうにかして、一日が終わる。
疲れた・・・
「お姉ちゃん、ガチガチだったね」
「うん。素人丸出しだったね」
ベクちゃんとモワちゃんが皮肉を言うが、反論する元気もない・・・
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