第25話
「種も仕掛けもございません」
あかりが、壇上で手品を始める。
こころとふたりで、袖から覗く。
ここからだと、手品の種と仕掛けが丸見えだ。
「お客さんからは見えないんだね」
「うん」
「手品の盲点だね」
「うん」
私は、そっけない返事をする。
「どうしたの?咲代・・・緊張してるの?」
「うん・・・かなり」
「珍しいね。心臓に毛が生えている咲代が・・・」
どういう意味よ。
緊張しているのは、あの子たちのせい・・・
「あっ、種がみつかった」
「お兄ちゃん、どこ・・・」
「ほら、あかりお姉ちゃんの左手」
「あっ、本当だ。お兄ちゃん凄い」
「まあね」
「ベクちゃん、モワちゃん、いつの間に・・・」
鞄に入れておいたはずの、ふたりが抜け出して、大声で騒いでいる。
私は、慌ててふたりを抱いて、外へ出た。
「いつの間に出たの?おとなしくして置いてって言ったでしょ?」
「だって、退屈・・・」
「もう少しだから、我慢して・・・」
ばれなかったよね。
「どうして?僕本当の事言ったのに」
ベクちゃんが、鳴きまねをする。
「そんな、顔してもだめ」
「でも、嘘をつくのは、いけないんでしょ?」
「そうだけど・・・あそこでのネタ晴らしは、禁句なの」
「それが、世の中をうまくわたっていく術なの?」
ベクちゃんが、尋ねてくる。
「そんな、大袈裟なものじゃないけど、あなたたちが生物とわかったら、大変なことになるわよ」
「大変って・・・」
モワちゃんが、震えている。
「つかまって、学者に解剖されるかもね」
ふたりは、抱えあって震えだした。
「お姉ちゃん、ぼくたち、死ぬのやだ」
少し脅かしすきだか・・・
「じゃあ、大人しくしているの。いい?」
ふたりを、睨む。
「うん・・・」
「・・・わかった・・・」
私は満面の笑みで言う。
「よろしい」
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