第14話 前進・・・

「じゃあ、僕は行くからね。ラルフ、アレックス。行くよ」

「ラジャー」「了解」


ラルフくんと、アレックスくんは、佐倉くんにしがみつく。

抱っこちゃんみたいだ。


私は、引き留めた。


「ねえ、佐倉くん」

「何?」

「ありがとう。私たち仲間だね」


私は彼の手を握る。


「よろしくね。佐倉くん・・・いや、まーくんって呼ぶね」

「いきなりですか・・・」

「私の名前は、わかるよね?」

「咲代さんだよね?」

「私の事は、咲代でいいよ」

「でも・・・」

「呼びなさい」

「・・・はい・・・」

「よろしい」


変な意味はない。

私の場合、名前を呼び捨てにされたほうが、嬉しい。


「でも、インチキにならないかな」

「何が?」

「いっこく堂。ちゃんとした腹話術で魂を入れないといけないけど、この子たちには最初から生きた存在だから、インチキになるような」

「いや、余計に大変だよ」

「どうして?」

「いっこく堂も腹話術で大変だけど、演じるのは自分ひとりなので、自己責任ですむ」

確かに


「でも、この子たちは、最初から生きているから、呼吸が大事になってくる。縛ることは無理」


そうなんだ・・・

ワンマンには出来ないという事か・・・


「咲代お姉ちゃん」

ベクちゃんが声をかけてくる。


「あっ、お友達との再会はどうだった」

「盛り上がったよ。ところで・・・」

「何?」

「あのお兄ちゃんの事、好きなの?」


ベクちゃんと、モワちゃんは、ニコニコしている。


「興味半分で訊かないの」

「興味全部で訊いているんだよ」


疲れるな・・・


「好きというより、『ほっておけない』という感じかな」

「どういう意味なの?」

「あなたたちを好きなのと同じ感じよ」


まあ、間違っていないし・・・

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る