おうちにかえろうよ

第9話 瓢箪から駒

一限目が終わった後、私は佐倉くんのところへ行った。

「佐倉くん、さっきはありがとう」

「何が？」

「ぬいぐるみの件」

「ああ、あれね、いいって・・・」

照れながら言う、佐倉くん。

「じぁあ、よろしくね」

「何を？」

佐倉くんの問いに私は、きょとんとする。

「いっこく堂」

「ワンスモア？」

「いっこく堂、がんばってね」

時間が止まる。

「本当に、やるの？」

「オフコース」

「えっ、なんで？」

私は、訳が分からなかった。

「自分だけじゃ、大変なんだよね」

「えっ？」

「僕もやるんだ、いっこく堂。仲間が増えてよかった」

「いっこく堂って、君もやるの？」

「うん」

佐倉くんは、ふんぞり返っている。

「あの子たちなら、簡単だろ？」

「あの子たち？ぬいぐるみの事？」

「うん。じゅあよろしくメカドック」

私は立ち尽くす。

「咲代、聖明にお礼言ってきた？」

あかりが声をかけてきた。

ちなみに、あかりはクラス全員を男女問わず、ファーストネームを呼び捨てにしている。

ファーストネームで呼ぶ方が、末永く仲良くいられるからしい。

「うん。一応・・・」

「どうしたの？浮かない顔して・・・」

「いっこく堂、本当にやれって・・・」

あかりは、不思議そうな顔をしている。

「だって、本当にやらないと、先生に嘘ついたことになるよ」

「えっ？」

「それに、クラスも期待してるし・・・」

はかられた・・・

鞄の中で、ベクちゃんとモワちゃんは、寝息を立てている。

幸せそうに。

のんきなものだ。