第8話 助舟
「あわわわ」
私はあわてて、鞄をしめる。
どうりで、膨らんでいると思った。
「咲代、どうしたの?」
隣の席のあかりが覗き込んでくる。
「あっ、この子たち・・・」
「シー」
私は、あかりに合図をする。
「飯塚、どうした?」
先生が来る。
駄目、ごまかせない。
そうだ、あかりに隠して・・・
席が離れている。
神様・・・助けて・・・
「飯塚、見せなさい。何か、持ってきてるのか?」
「はい。教科書とノートと文房具・・・」
「そうじゃない。余計なものだ」
先生は、私の鞄を開ける。
プライバシーの侵害だ。
「なんだ、これ?ぬいぐるみなんて、持ってきてるのか?」
「あっ、それは、お弁当箱です」
「そうか、お弁当箱か。かわってるな」
「そうなんです。先生、わかっていただけました?」
「ああ。生徒を信用なくてどうする」
ハハハハ
「なんて、事が通るか」
先生に怒鳴られる。
せめて、起きないで、ベクちゃん、モワちゃん
「あっ、それは飯塚さんが、腹話術で使うんです」
クラスの男子が、先生に声をかけてくれた。
彼は、佐倉聖明(さくら まさあき)くんだ。
とても、大人しい男の子だが、芯はしっかりしているので、私は好意を持っている。
但し、恋愛対象でなく、人としてだが・・・
「腹話術?」
「ええ。飯塚さんは、今度の文化祭のかくし芸で、いっこく堂をやるみたいなんです。その練習です」
「飯塚?そうなのか?」
ありがとう。佐倉くん。
「ええ。そうなんです。私、はまってて。」
「そっか、先生はファンなんだ。でも、知らなかったぞ。お前もファンなんて」
「かくし芸にならないじゃないですか」
「そうだな。がんばれよ」
どうにか、ごまかせた。
ありがとう、佐倉くん。
後で、頭をなでなでしてあげるからね。
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