第3話
「…ちょっとおじさん、大丈夫かよ」
「酒…酒が飲みたい…」
「…じゃあ、これどうぞ」
「!いいのか!」
「はいどうぞ」
路地に蹲り、具合が悪そうなのに酒酒言ってるおじさんを見かけてしまった俺は、ついこの間購入した日本酒をあげることにした。
本当はハヤトと飲むつもりで予約してやっと手に入れた物。
…別れた今、必要なくなった。
結構な値段したけど、もういいんだ。
アイテムボックスから酒瓶とコップと、ついでにおつまみもセットにしておじさんに渡した。
「おう…こりゃあ……サイコーだぜっ」
早速コップに注いで一口飲んだおじさんが、にこにこーって笑ってくれた。
「良かったね」
「ありがとな坊主。お礼にこいつをくれてやるよ」
「ありがとうおじさん……これスコップと虫取り網が合体してるんだけど」
「おう」
「…えー」
「坊主にぴったりの武器だろ」
そう言われ、渡された武器、を眺める。
棒の先端、丸い輪には網。
その逆方向には使い易そうなスコップ。
まあ、確かに、採取専門の俺には必要な道具だな。
「おじさんありが、とう」
改めてお礼を言おうとすると、おじさんはそこに居なかった。
えーと。
ドワーフっぽいおじさんだったけど実は妖精だった?
ドワーフって妖精の一種なんだっけ?
段々分からなくなってきたので、俺は考えるのを辞めることにした。
「じゃあ元気でねーこれからはひとりで行っちゃダメだぞー」
「うん、ありがとー」
露天商の両親と手を繋いで元気よくお礼を言われた。
実に良いことをした気分だ。
泣き喚く迷子を放置する人々に怒りを覚えたけど癒される。
もうすぐ街の外ってところで、俺は迷子の女の子を見つけた。
ぎゃんぎゃん泣いているのに、みんな無視。
こういうトコあるよな、異世界。
俺は女の子に声を掛け、どうしても必要だと言うお花を摘んで市場へ向かった。
女の子の話では、ご両親は市場で露天商をしているそうだ。
本当は必要だった花を用意できなくて困っていたので自分が採取しに行った、なんて言われて泣けた。
俺がかわりになんぼでも採取してきてあげるのに。
肩車をして店を探せばすぐ見つかって、心配していたご両親は泣いて俺にお礼を言ってくれた。
しかもお礼として商品でもある花の飾りもくれた。
で、例によって消えた。
妖精さん、でしたか。
もう慣れたぜ。
ところでこれ、男でも、着けてても、平気、だよな?
白いし派手じゃないし、いいよな?
ハヤトに聞きたいけど、別れてた。
「あー…何か色々あった…ありすぎて…夕方…」
これから外で採取か。
まぁ、採取くらいならいけるか。
帰還する人々と入れ違い、俺はようやく街を出た。
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