「推論の自由」

 作者はこう考えた――作者はこう考えたであろうと私は推論する。このふたつの間にある隔絶は、耐えず延長する時間の遡及不可能性による必然的な帰結であるが、後者を選択することしかできない我々は、逆説的な形で、無限の推論の自由の獲得を達成したといえる。よって、我々はどのような推論も可能であるがゆえに、作者の意図をとう設問がテストで出題された場合、なにを書いても赤丸を獲得できるはずである。


 それにも関わらず、「標準」の臣下たちは、逸脱した推論というものを恣意的に設定した上で、我々の「推論の自由」を侵害しているのである。我々は「標準王様」の苛烈な独裁に抑圧されているのだ。私は革命家としての矜持なんて抱いていないけれど、独裁への反抗心を常に心のうちに宿し、「標準」への包摂を拒否し続けている。それは「問題児」という私にくだされたレッテルが雄弁に語っている。


 さて、私は、現国の単位の取得を放棄することにより、どのような帰結に着地することになるのだろうか。そのことに対する不安というものの消しがたさは、どこに起因するのだろうか。私にはわからない。

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