「標準王様」
標準――先生は言う。これが「正確」な発音であると。では、先生の発音が「正確」であるという根拠はどこにあるというのだろう――いや、そんなことは、どうでもいい。ただ、標準というものが、「不正確」な発音を、非標準であると間接的に定義する。そして、数多の「不正確」を、サーカスの見世物のようにしている。標準は、ぶどう酒の入ったグラスを揺らしながら、玉座に深く腰をかけて、高みの見物をしている。
標準に対する革命――標準の非標準化。或いは、非標準の標準化。どちらでもいい。無数の差異のある標準か、はたまた非標準かが、秩序なく乱立している状態こそが、健全である。それが、平等である。差異こそがすべて。「みんな違ってみんないい」という教えは、真理だ。だから私は、標準に迎合することなく、非標準の矜持を誇りたいのだ。
先生は私を叱った。しかし私は――問題児の烙印を押されている私は――言い返す。「先生はさぞ愉快でしょうね」と。言ってやった。するとこの若き「標準」の臣下は、もっと私を叱りたおしてくる。いい。これでいい。
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