#04 蒼き狼
…――フフフ。BRZ-XXに勝てるやつなんているわけがない。
ククク。
と、蒼き狼の車中で、1人の男が笑う。嗤う。
というかだ。俺ッちに負けたのは忘れたのか?
グッ!!
嫌な事を思い出してしまった。
確かに、あの阿呆に負けた。ボクと愛機は。負けたからBRZには、しばらく乗れなかった。だがな。今のこいつ(※BRZ)は更にパワーアップしたんだ。ボロボロになった外装のカスタムは、もちろん、走りに特化したチューニングを施した。
今度は絶対に負けないと気合いを入れたんだ。
全てを、ぶっ壊し、全てを、ぶっ殺す為にだ。
深き青で、特徴的なフォルムを持つBRZ-XXが、発進したゴルゴの後を追う。
甲高いエンジン音で雪を蹴散らし、特徴的な三角形なヘッドライトを灯して……。
BRZは、水平対向エンジンを採用したズバル社のスポーツカー。
ドヨダのGT-弐000の復活か、とさえも言われた名機である。
「てかさ。あのブラウン・マジェスカって、なんだったんだろうね」
ゴルゴの運転席と助手席の間から、にょきっと顔を突き出してハウが笑って言う。
多分に、野乃実が、そのオーナだと思われる例の怪しさ満点な黒塗り高級車の事を言っているのだろう。ホワイは前方を注視したまま、くいっと軽い音を立てバックミラーをハウに向ける。助手席に座るフーは、静かに目を閉じて右口角をあげる。
フムッ。いよいよ、しびれをきらしましたか。
もう少し隠れていれば、こんなにも早くゲームが終わる事もなかったのですがね。
「あらら」
と更に顔を突き出して口を開けハウも呆れる。
なにを見つけたのだろうかと僕は後ろを見る。
その時は気づかなかったのだが、後から考えると、あの時点で地獄の入り口に立っており、その水先案内人としてのBRZが後方にピッタリと張り付いていたわけだ。ただし、この時は本当に気づいておらず、ハウが呆れた意味も分からなかった。
「ホワイ。雪なのですが、問題はないですか?」
足を組み両腕を組んだマフィアのボスが言う。
ふんぞり返ってだ。
無論、フーその人。
「ふふふ。お父様、一体、私を誰だとお思いですか? 灰色探偵のホワイ・ダニットですの。降雪など、なんの問題にもなりません。むしろ愉しいくらいですわ」
そう答えたホワイとは対象的に、雪が、一層、激しく降り始める。
フロントガラスに叩き付けられた雪で視界が狭まり、制限される。
そして、
ここは主要幹線道路。しかし、すでに時速は85kmを超えている。無論、他車をすり抜けて間をぬうゴルゴ。赤信号に捕まらないよう計算しているのか、次々と青が続く。面白いぐらい。その後ろにピッタリとつけ、追いすがるBRZ-XX。
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