#05 ポンキッス

 …――三つ、助言をしておきましょうか。


 フムッ!


 ペペロンチーノとオレンジティーを完食して完飲したあと、フーに言われた言葉。


 いや、言われたんだと思う、僕に。多分。


 ハッキリと確証がないのは、なにせ声が小さ過ぎて聞き違いかとも思ったからだ。


 というか、食事に下剤など入れられておらず、食べたあとも下痢にならなかった。そしてハウもホワイも自分で皿を片付けていたなと思った時、僕はどうするべきなんだろうな、なんて考えた。その際、何気なく、ささやかれたわけだ。フッとだ。


 他ごとを考えていた為、余計に聞き違いかもしれない、と思った。


 どうなんだろうか。分からない。うむむ。


 てかっ。


 ヒントではなく助言という言い方をするという事は、無料でのヒントという事か?


 いやいや、フーに限っては、あり得ない。


 あり得ないとしか思えない。どうしても信じられない。


 まあ、助言などするくらいならば、ヒント料を請求してくるのがデフォだからな。


 気まぐれでヒント料なしの助言はあるにはあるが……。


 うむむ。


「さてと」


 皆さんのお腹も膨れてきたところで、今から改めて今一度、再開致しましょうか。


 先ほど、くじかれてしまいましたからね。


 フムッ。


「改めて聞きます。ヒントが残り2回となりましたが、……解決まで導けますか?」


 無論、正直、心許ない、としか言えない。


 てか、フーは、なぜ僕が持つ依頼料の総額を知っているのだろう?


 ヒントが残り2回だと分かるはずがない。


 依頼料の総額なんて言っていないからな。


 もちろん、見せてもないし。なぜなんだ?


 なんて思うのは、やはり無粋なんだろう。


 灰色探偵には心を読む達人であるホワイがいるのだから僕が持ってきた依頼料の合計金額など確認しなくても分かるのだろう。そうだな。そんな些細な事で思考を使うよりは、残り2回のヒントで解決できるのかを考えた方が、いくらか建設的だ。


 ただ、ここで虚勢を張っても意味がない。


 できますなんて言って先ほどの助言の話を無碍にする必要はない。


 無論、僕の聞き間違いだったら素直に思いを吐露したところで意味がないのだが。


 それに、


 僕だって助言など信じてはいないが、それでも可能性があるならば捨てたくない。


 助言の話が聞き間違いではなければ、それを授けて欲しいと思う。


 だから、


「正直、解決まで辿り着けるのか心配になっています。いまだ事件の大枠しか掴めていませんし。この先が、どれくらいあるのかは分かりませんが、不安で一杯です」


 残り2回という心許ない回数では、です。


 と僕は、今現在、感じている憂いの類いをストレートに吐露した。


 フーが、


「フムッ」


 と言ったところでホワイが缶ジュースを三つ、手に持って現れる。


「話の腰を折ってしまって申し訳ありませんが、お父様の好きなポンキッスですわ」


「お、これはありがとう。気が利きますね」


 ちょうど喉が渇いていたのです。フムッ。


 という意味を込めた笑みを浮かべるフー。


 ふふふ。わたくしは動機担当のホワイですわ。これくらいはです。


 とは言わなかったが、そう言いたいといった思いが、ありありと顔へと出ている。


 褒めて欲しいんだろうな。……やっぱり。


 といった僕の気持ちなど、どこ吹く風なホワイが静かにも続ける。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る