#06 拒否権、再び
「どうぞ」
と洗練され美しい所作で。
ホワイが、白く華奢な指を使って優美にもフーと僕の眼前へと缶ジュースを置く。
コトリ。
そして、
ハウが戻ってきて席についたところでハウの目の前にも一つ置く。
コトリ。
「ハウもね。飲むでしょ?」
「ありがとうだわさ、姉貴」
てかっ。
ポンキッスとは、オレンヂジュースだな。
うむむ。
オレンヂジュースか。今までのフー達との付き合いからの推測して、ちょうど三つあるところを見ると、これが助言に繋がるのではなかろうか。灰色探偵は、そういった感じで動く事が多いからな。では、缶ジュースにどういった意味があるのか?
分からない。分からないとしか言えない。
うむむ。
「ホホホ」
おおっ!
なんだ?
ホワイが、いきなり意気高々に笑い始めて、少しだけ驚き、少しだけ恐くなった。
「ポンキッスに意味はありませんわ。お父様だけ、お食事をなさってないので、せめて飲み物だけでもと、そう思っただけの事ですの。残りの二つはついでですわ」
冷蔵庫の中に三つしかなかったですしね。
意味なしか。果たして、信じられるのか?
「フム。ともかく残り2回のヒントでは解決できるか心配なのですね。よろしい。では三つの助言を授けましょうか。山口君。もちろん、お聞きになりますよね?」
てか、やっぱり助言は在ったのか。おお。タダでヒントが聞けるぞ。ありがたい。
まさにフー大明神様々だな。嬉しくて思わず顔がにやけてしまう。
てかっ。
無料なヒントにウキウキな僕に聞かないという選択肢があるのか?
否ッ!!
聞くに決まっている。それ以外に何かがあるのか? ないな。ない。間違いない。
と僕が口を開こうとしたした瞬間、フーが、どかっと重苦しい言葉を被せてくる。
僕の両肩に100tな重しを乗せてくる。
ずっしりとした、キング・ザ・重しをな。
「それとも……、山口君は敢えて難易度を上げる事を選びますか?」
と……。
うおっ。
これは、この言い回しは。思い出したぞ。
そうだ。
頭の中から抜け落ち、すっかり忘れていたのだが……、
この言い方は、拒否権を発動するかどうかを確認しているといったところだろう。
つまり、
推理ゲームでの難易度を上げる為に敢えてヒントを聞かないという、今の場合、助言を聞かないという拒否の意思があるかどうかを問いただしているわけだ。クソ。あの時も言ったが拒否など一般人でしかない僕にできるはずがなかろうもんがぁッ!
そうか。
なるほどな。フーの小憎らしさは、ここにも在ったぞ。
そうだな。敢えて聞くまでもない事を、今まで、聞かなかった事には感謝しよう。
だがな。
一番大事なところで敢えて(※多分な)聞いてくる底意地の悪さをなんとかしろ。
そう。拒否権の発動をするかどうかなんて事をだッ!?
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