#04 残り2回
さてと。
では続けていきましょうか。
我々のゲームをね。存分に愉しみましょう。
「思うに、その依頼料が入った袋の中には10万円ほど残っているかと存じます。つまりヒントの残り回数は2回ですね。どうです? 残り2回で解決できますか?」
と言われたが耳に届かない。
僕はフーが口をつけた事で、
ペペロンチーノとオレンジティーが、とてつもなく惜しくも感じてしまったのだ。
またお腹の虫が盛大に鳴く。
オレンジティーが入ったグラスを手に持つフーを制して、バッと一気に奪い去る。
「おや?」
下剤が入ってないか怖かったのではないのですか? ……フム?
確かに下剤が入っていれば、朝の二の舞だ。
恨めしくなってグラスを睨み付ける。オレンジの液体が入っているそれをジッと。
無論、朝とは違ってトイレの場所は知っている。いや、そんな些細な差異はどうでもいい。オレンジティーが入る汗をかいた冷たいグラスを握りしめる。わなわなと。ただ下痢になる苦痛とリスクを考えるならば、これは返した方がいい。いいのだ。
でもお腹が減ってしまって判断力が鈍る。飲み物でもいいからお腹に入れたいと。
そう心が叫ぶッ。悲痛なる咆吼とも言える。
更に、ぐっとグラスを握る手に力をこめる。
でも、いいのか。本当にいいのか。飲んでしまって。うおおっ。
下剤入りなのか、違うのか、どっちなんだ?
フーが微笑みかけてくるが飢えた野獣のようガルルと吠える僕。
このグラスは渡すもんかと。
思いとは裏腹に、いや、欲望に忠実にといった方が適確か、ともかく威嚇する僕。
グルル。
「フムッ」
と、フーは一言だけ言って手を引っ込める。
「てかさ。いつもいつも無駄な事で悩むよね。ケンダマンってさ。パパが、もうペペロンチーノもオレンジティーも毒味してんじゃん。なんで安全って分からないかな」
と自分の食べたものは自分で片付けるとばかりにキッチンへと消えたハウが言う。
小生意気に小癪な声だけで。
それに、
もう自分でも食べてんじゃんか、さっきさ。
とも付け加えてくる。あ、確かに。そうだ。
うんっ。
そっか。
「というか、下剤の件は必要だったと午後に私たちから暴露された時点で必要でなければ下剤を入れられるような事は起きないとも判断できますのに。やれやれですわ」
ホワイも付け加えてくる。責めるかのよう。
なんか、もう泣きたくなってきた。マジで。
更に追い込みをかけるように続けるホワイ。
「でも、ハウ、いつも答えが目の前にあるのに手放すのがヤマケンさんですからね」
思い込んで勘違いしてです。
ほほほ。
と、また平仮名で微笑んだ。
彼女も、また自分で片付けるとばかりに皿を持ってキッチンに消えていきながら。
仰る通りです。全て。はい。トホホと、項垂れるしかなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます