#03 謎を残す

「ともかく自身でも理解したとは思いますが、山口君は思い込みが激しい。しかし推理では全ての可能性を考慮して無駄な事は何もないと考えることこそが肝要です」


 フムッ。


「それを忘れないで下さいね」


 と、フーは優しくも微笑む。


 いつものあの柔和な笑顔で。


 そうだな。そうだ。確かに。


 CVさんは最後まで僕に付き合ってくれて最後まで適確な助言をくれると、そう思い込んでいたからこそ離脱されてしまい、精神的に追い詰められたんだ。CVさんだけが僕の味方であり、絶対に裏切らないと思い込んでしまっていたからこそ……。


 裏切られたとだ。そうだな。


 どうにも僕はダメだなと肩を落として自分の不甲斐なさを呪う。


「まあ、でもいいんじゃん。今は、また推理ゲームに向けて、やる気を出してるし」


 と、ハウは最後に残ったパスタをちゅるりとうどんを食べるよう口に収めて言う。


 美味し。美味し。と笑んで。


「そうですね。一時は、どうなる事やらと心配致しましたが、どうやら杞憂に終わったようです。……むぐっ。お父様、とても美味しかったです。ごちそうさまです」


 しずしずと愛らしく手を合わせてから、ごちそうさまなホワイ。


 というか、どうなる事やらなんて、どの口が言うんだ、ホワイ?


 始めから僕がやる気を出すように仕組んだ黒幕は心理操作の達人なお前だろうが。


 クソッ。


 うむ。そうだな。この辺りで、どういった事情(というかフーたちの策)で僕がやる気を出したのか、つまりゲーム再開を選ぶ事になったのかを話してもいいだろう。しかしながら、地味で、そんなに楽しい話ではない。むしろ僕にとっては恥だ。


 とどのつまり灰色探偵ダニットの面々にいいように弄ばれたようなものだからな。


 だから、察するにとどめて、ここでは割愛させてくれ。頼むッ。


 ただし、


 これ位は明かしておこう。それこそヒントとして。僕と読者のゲームにおいての。


 つまり、


 フー達と秀也との話を聞き、あの時点で徐々にではあるのだが、やる気が回復してきていた。それはフーから事件に対しての興味深い話を聞けたからこそだ。無論、彼の話し方が、上手く熱があり、興味深く新事実を聞けたからだとも言える。


 加えて、


 その後、


 僕が気絶する前に秀也にした質問を珍しく褒められてしまい、調子に乗ったとだけは言っておこうか。それ以上は恥ずかしい。無論、さして面白くもない話だからな。もう忘れてくれ。むしろ、たまには謎を残して終わった方が面白いだろ? うむっ。


 兎に角。


 ペペロンチーノを返して、お腹の虫が、ぐうぅっと盛大に鳴る。せっかくの夕食を返したのは、ちょっと惜しかったかなと思った時、フーが、僕の返したパスタの乗った皿を手に取って開いた座席に座って食する。食べないのならば、わたくしがと。


 オレンジティーにも口をつけてから、こくっと一つ喉を鳴らす。


 ふうっ。

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