#02 思い込みと焦り
そうだな。……こう考えられないだろうか?
3人へと別々のものを作ったとなれば、やはり下剤入りは、もはや確定事項とだ。
別々に改めて作っているからこそだ。うむ。
などと考えていると、ホワイが笑んで言う。
「あらあら、お父様、ヤマケンさんが、なにやら邪推しているようです。ただヤマケンさんの無防備さは今に始まった事ではないのですよ。すなわちスモモですわ」
スモモ?
まあ、でも今は花言葉など、どうでもいい。
続きは?
「思い込みが激しいから、勘違いして疑えない、もしくは疑ってしまうのでしょうね。つまり、疑う気持ちが薄いというよりも思い込みが激しいから疑えないと……」
ほほほ。
うむむ。
なるほど。そうかもな。思い込みが強いから疑えない、或いは疑うというのだな。
というか、この場合、平仮名で笑うわけか。
でも、その笑いの違いに本当に一体どんな意味があるんだろう?
「そだね。ケンダマンは、こっちが心配になるくらい無防備になる時あるよね。思い込みが激しいからさ。もごもご。美味ぇ。てかさ。ケンダマン、忘れたのかや?」
忘れた?
なにを?
「あの下剤入りのモーニング食べたあと、すぐにパパからコーヒーが出されて何の疑問も持たずに普通に飲んでたじゃない。あの時もヤバいくらい無防備だったよね」
もぐもぐ、も一つオマケに、もぐっとなッ!
にゃへ。
美味ぇ、美味ぇ、とパスタを食べる事を止めず、言い放つハウ。
だから今更だわ。思い出しておくんなまし。
と……。
あれっ?
そうだったか、そんな事があったか? まったく記憶にないぞ。
あのあとに珈琲が出されたのか、フーから。
「そうですわ。お父様が、代わりに、とミルクティーを片付けて珈琲を出されたのです。でも一切、何の疑問も持たず、普通に飲んでいましたわよ。思い出しました?」
ちょっと待て。記憶を整理してみる。うむ。
うむむ。
と首をひねって、朝、あった事を改めて思い出してみる。確かに僕は下剤事件の直後、珈琲を振る舞われ、何気なしに飲んでいた。むしろミルクティーを惜しいとさえ思ったくらいで今度は絶品珈琲かなんて……。思い出した。マジか。マジでか。
あれにも、下剤が入れられなくて良かった。
本当に。
真面目に僕自身、自分の警戒心のなさに頭を項垂れるしかない。
いや、あの時、思考が絡まってきていて落ち着こうと思っていた。落ち着けば良い考えが浮かぶなんて考えた。事前にトイレの場所でのヒント請求ですかと言われてしまって頭に血も上っていたしな。だから、なんとかせねばと焦っていた。
言うまでもないが、焦りというものは、思い込むのと似ている。
つまり、焦ってしまい、なんとかせねばとしか考えられなくなったというわけだ。
そうだな。焦りは、思い込んでそれ以外考えられないと同義だ。
トホホ。
「フム。まあ、だからこそ先ほど秀也君のところに聞き込みに行った際、落ち込んでしまい、ともすれば推理ゲームを放り出してしまいそうにもなったのでしょうね」
多分にだが、フーは、僕が推理ゲームを降りると言い出した事の事由は知らない。
いや、正確には詳しくを知らないといった方がいいのか。推理して、ある程度、どんな事があったのかは悟っている。ただ少なくともネットの協力者であるCVさんとの正確なやり取りは知らないだろう。当たりをつけて話しているんだと思う。
それでも的確な応えを返すのは、やはり彼の推理が卓越しているからだと言える。
思い込みを廃し可能性全てをすべからく精査しているからこそ。
僕とは大違いだ。思い込んで疑って、果てに勘違いする僕とは。
また不甲斐なくなり肩を落としてガックリとロボのよう頭を垂れるしかなかった。
トホホ。
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