#08 美味いからこそ
そして、
フーたち灰色探偵ダニットの面々と件の秀也は……、
ある程度、オカルト談義に花を咲かせて(※特にホワイが)から事件に話を戻す。
「フム。人体蒸発の話は、一旦おいておきましょうか」
「ああ。分かったよ。で、なにが聞きてぇんだ? ここまできたら、なんでも話す」
「どちらにしろ応えは分かっているのですが、念の為にです。奈緒子さんがいなくなったと分かったあと国道を逆走して彼女を探そうとは思わなかったのですか?」
応えが分かっているなどと言うのが、フーらしいな。
いや、本当に分かっているからこその発言なんだろう。確認の為でしかないから。
まあ、そんな言葉が出るのがフーか、……と最近、ようやく分かってきたのだが。
「ああ、逆走してって話か。確かにな。一瞬、考えたよ。もし奈緒子がいるならば国道沿いだろうからな。でも無理だった。単車のガスがなかったのは話だろう?」
フムッ。
「3日前から給油してなかったからな。だから逆走できなかった。ガソリンがなかったんだ。奈緒子を探す為に走り回るだけのガソリンがな。舌打ちも出ちまったな」
でだな。
「一旦、町で給油してから急いで現場に戻った。でも、またもや時すでに遅しだ。現場には警察がバンバンきてて、そこまで戻れなかった。また舌打ちってわけさ」
と秀也が言ったあと、ゆっくりと目を閉じてから、また、あの黒い扇子を広げた。
片手で起用に派手な音を立て。
バサリ。
これにしてお終いとばかりに。
無論、これら秀也からの発言には妙なところはない。
むしろ何でも話してくれる彼には好印象さえ受ける。疑うべき点はない。強いていうならばオカルッチックな話を混ぜてくるのが、少々、気にはなる。しかし根拠があやふやな話ですら話してくれたからこそ信じられるとも言い換えられる。うむむっ。
僕は、おもむろにパタリという軽い音を立ててからメモ帳を閉じる。
いや、ゲームを降りる気満載だった僕がメモ帳を開いている時点でハマっている。
フーたちの策にだ。この時の僕には気づけてはいないのだがな。不甲斐ない事に。
兎に角、
悪魔城ドラキュラ的なふわふわに在る席に座ってペペロンチーノへと口をつける。
まるで、おろし立てのように、キラキラときらめくフォークを使い。
美味い。
その隣に添えられた淡いオレンジティーを口に含む。
美味い。
いや、美味いからこそ嫌な気分にもなるのだ。イヤミかと。ともすれば、今、この場でブレイクダンスを披露したい気持ちにも駆られる。というか、むしろコサックダンスを踊り出した方が、今を表現するには的確か。まあ、意味はない。気にするな。
兎に角、
そう。ここまでが、僕が気絶をしている間にフーたち灰色探偵ダニットと秀也との間で交わされた会話の内容である。そう聞かされた。繰り返すが、悪魔の胎内である悪魔城ドラキュラの腔内でだ。そして時間は戻ってゆく。僕らが在る、この場所に。
もう、この推理ゲームから降りようと考えている気持ちが薄れてきていた今へと。
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