Chapter16 さようなら
#01 パワーワード
12月20日 午後4時07分。
ピロン。
おやッ?
ダニット面々の顔色をうかがっていた時、唐突にスマホが鳴る。
もしかして……、CVさんか。四つ葉のCVさん。
僕が、今回の事件解決を助けてくれるようネットで募った有志の一人。というかネットでの協力者は、今、四つ葉のCVさんしかいない。いや、逆に、複数にいると統率がとれずに混乱もするし、CVさんの推理力を考えればCVさんだけで充分だ。
しかも、
彼(彼女?)の助言は的確だからダニットとの推理ゲームにおいて凄く力になる。
加えて、同じ素人だからこそ力をもらっている。素人でも、ここまで出来るとだ。
無論、ダニットとの勝負を繰り広げる僕にとっての唯一の味方。
もし、仮にでもCVさんがいなくなれば、僕の味方は誰一人いない状況にもなる。
推理ゲームにおいての話だ。
無論、今まで僕の心が折れなかったのはアドバイザーにCVがいたからだ。彼女からの正論を聞けたからこそダニットの屁理屈にも付き合っていられたのだ。そんな彼(彼女?)から、よくやく連絡がきた。待ってました、なんて思ってしまう。
スマホをねじ込んであったポケットに手を突っ込んで、スマホを慌てて取り出す。
今し方の大暴露大会で、精神力が0近くまで削られたからこそ。
誰だって知らない内に操られていたと知ったら嫌な気分にもなって疲れもたまる。
だろッ?
ともすれば慌てすぎてスマホが手から滑り落ちてしまうのを、なんとかかんとか防ぎ、正論を顔の前へと持ってくる。電源ボタンを押し、パスワードを入力する。そんな一手間も惜しいのだが、そういった機能がある以上、従うしかない。うむむっ。
そして、
急いでチャット画面を開く。
さてさて、なんでしょうか?
オホホ。
「あ、姉貴、なんかケンダマン、キモい顔している」
「あら、本当に。黄色いカーネーションね。フフフ」
うっさいわ。お前らは敵だ。
クソが。
さてと。
>まず始めに。……ごめんなさいと言っておきます。
ほへっ?
いきなり、なんだ? どうした。なにあったんだ?
一抹の不安という名の暗雲が脳内に渦巻いてくる。
嵐の予感がして、少しだけ、怖い。なんなんだよ。
>どうやら、もう、このチャットを続ける事が難しいようです。詳しくは申し上げられませんが。ごめんなさい。この会話ですら筒抜けな可能性もあるので……。
む、難しいだって? 筒抜けだって? 誰にだよ?
閉じられたプライベートなやり取りだぞ。他人に見られるなんてあり得んだろう。
その他人がハッカーでもない限り。いや、ハッカーが……、マジか。そうなのか?
黒雲が脳内を蹂躙して雲間には稲光が走り続ける。
>黒いブラウン・マジェスカ。
ブラウン・マジェスカって?
確かドヨダの車だったよな。
もしか、
事ある毎に目の前へと現れる、あの車の事なのか。
>これですら危険なのですが、せっかく知り合えて、ある程度の情も湧いたので最後に敢えて書き記しておきます。そして、もう一つ。この事件は闇が深いものです。
あの車の事なのか、違うのか、それも分からない。
嗚呼っ、
こんな書き方じゃ。マジか。
大体、あの車の主は、一体、誰なんだよ。クソッ!
平日の昼間に拘わらず、ちょいちょい現れるのは、相当の暇人か、……それとも。
ただ、一正の危険性が徐々に浮き彫りになってきて、闇が深いというのは納得だ。
そんな一正がハッキングのスキルももっている。そう言いたいのか、CVさんは?
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