#07 ぐるっと

「まず言いたいのは、秀也が午前中、どんな状況にあったか。そして午後である今、どんな状況にあるのか、それを考えてみぃ。そこから始めよっか。ほれほれのほれ」


 と考え始めた僕の右頬を左人差し指の指先でぐりぐりと押して突く。


 うぜぇ。


 己の活躍の場がきたとばかりに調子に乗っているハウがウザすぎる。


 例えるならば、会社から帰ってくる親に文章で、帰りにコンソメ味のポテチ買ってきてと頼んだら、数分後にコソソメ味のポテチなんて売ってないよ、と返事が返ってくるほどにウゼぇ。平仮名で、こそそめ。いやいや、コソソメ味ってなんだよ。


 字面は似てるけどな。こそそめ味など始めから存在しないわ、コラ。


 なくて当たり前だよ。コソソメ味じゃなくて、コンソメ味だからな。


 そんな事を考えたら、余計にハウのウザさが増した気がして損した気分にもなる。


 ただし、


 確かに、ハウから言われた事を考えて、少しだけ思った。もしかしたら聞き込みを二回に分ける必要性が在ったのかもしれないとだ。そう。午前中の秀也は寿司屋の開店準備に追われていた、そして今は午後の休憩時間。つまりだ。時間がなかった。


 すわ警察が容疑者を呼び出してから事情聴取するのとはわけが違う。


 長時間、拘束し話を聞けるわけではない。


 午前中の聞き込みでは開店準備に追わた秀也には時間がない。最小限で絶対に聞き出したい事だけを聞くしかない。無論、午後とて、午前中よりも時間はあるとはいえ、それでも許された枠の中で聞き込みをするしかない。だから二回に分けた。


 時間的制約というものを考えれば当たり前で当然の事だったわけだ。


 うむっ。


 そうか。


 うむむ。


「その顔は分かったってところだね。ただハウちゃん仕込みのコトコト煮込んだ絶品スープは、そんなもんでは終わらんのよ。はい。ついでにそれも教えちゃいますぅ」


 猫騙しよろしく僕の目の前で柏手のハウ。


 おう? まだ続きがあるのか。むしろここがスタートラインだと言い出しそうだ。


「じゃ、次は、今日、回った場所を時系列に沿って並べ替えてみてちょ。そして小春市の地図を思い浮かべる。その地図上で回った場所を順番に追ってみるッス」


 はいはい、面倒くさそうな顔しないで、さっさと言われた通りにやる。やるのだ。


 だぁぁ。


 ハウは、再び、鼻頭に右人差し指を強く、ぐりっと押しつけてくる。


 うざぁ。


 てかっ。


 地図を思い浮かべるなんて高等技術、文系な僕には高難易度だが、やってみるか。


 まず、フーのお店である、ふわふわから一正の家に向かった。お次は秀也の実家である寿司屋。その次は殺害現場でのパチンコ玉探し。そして定食屋でカツ丼を食う。みんなは特上で僕のだけ並、デザートなし。次はパチンコ玉を売っていた、お店。


 あれ、ちょっと待て。いやいや、まだ判断を下すのは早計だ。もう少し考えよう。


 パチンコ玉を売っていた店の、お次はトラック運転手の家だったな。


 そして、


 その運転手の元同僚の家に寄り道してから運送会社へといったんだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る